つぶやき・ささやき(Tweet)2021年3月~11月

■突き進む際の6つの根拠(2021年3月11日)

「大きな挑戦を実行する」ということを「判断・決断」するためには、複数の根拠(原動力)がいる、と考えてきた。他の人達がやっていないことが多く、孤独な闘いになるわけで、勇気がいるからだ。

1987年頃、「エンジンの乱流燃焼シミュレーションモデル構築をやる」と決断する前には、

・ベクトル処理型スーパーコンピュータの台頭

・乱流と燃焼現象の繰り込み群理論

・私の若さ

・私の熱流体力学の基礎力

・企業がスパコン活用を拡大しようとしている時期だったこと

・素晴らしい恩師とヤル気のある上司の存在

という

という6つの根拠(原動力)をリストアップできた。30年以上前、当時、乱流燃焼の安定度を定量的に解析することは夢のまた夢だったのだが、「6つくらいあれば実現するだろう」と考えて踏み切って、燃焼のLES(Large eddy simulation)、DNS(Direct numerical simulation)に突き進んだのである。3年間に2回、「朝の6時頃から研究に打ち込むことを半年くらい」行ったところ、実用的な解析ができるところまで到達した。

2008年頃に提案し始めたFugineとFusineに注力することを決める際は、

・30年に渡って構築してきた独自の統計熱流体数値シミュレーションモデルがあるので、ある程度、実機をつくらずに性能改良検討などができること

・この独自のシミュレーションによって、エンジンに要求される5つの課題(熱効率の大幅な向上・燃焼に起因する振動騒音レベルが上がらないこと・価格上昇をおさえられること・Emissionsが増えない素質があること・重量増加や信頼性の点での問題がないこと)が全てクリアできる可能性が見出せたこと

・研究室メンバーの中に、本気でやる気のある学生がいること

・提案したエンジン原理に驚き、重要な助言やアシストをして下さる経験豊かな学外の実力者が5名いたこと

・飛躍的な二酸化炭素低減策を志向すべき時代であること

・提案した原理が、化学反応だけでなく、原子核の反応を誘発する可能性もでてきたこと

・特許の権利化ができたこと

という7つの根拠(原動力)があった。これも、燃焼実験では原理確認の最初のヤマを2016年頃に超え、実用化に向けた段階に近づいている。更に、放射線を出さない弱い原子核反応の原理確認実験の準備がかなり進んだところまできている。

これ以外にも、「100年間できなかったことを可能にする提案」をしてきたが、根拠(原動力)が2つくらいまでであったので、論文をいくつかPublishはしてきたものの、まだ、突き進む「判断・決断」はしないできているものがある。その一つが、乱流遷移の計算理論である。

■ラフランスの中身と皮(2021年3月12日)

ラフランスの外見の色合い・形・大きさを見て、中身の味の善し悪しを「判断」することはある。でも、中身を食べたら期待した味ではないことも結構ある。外見は良くなくても、中身が良ければ良いのである。そもそも、ラフランスの外見はあまりよくはないが。なので、外見よりも中身が重要だ。

ラフランスの皮には健康に良い成分もあるかもしれない。中身を守る、という機能もあるだろう。なので外見にも価値はある。でも、ラフランスの皮だけを食べる人はほとんどいないだろう。やはり、中身が重要だ。

でも、このことは理屈ではわかるような気がしても、実際にいくつかのラフランスを食べてみないとわからない。素晴らしい味の中身を持つラフランスに出会うまでは、腑に落ちないのかもしれない。

私は、山形で5年程、生活したことがある。ラフランスの名所でもある。山形のスーパーでは、外見は良くないが安くて美味な中身のラフランスを売っており、たくさん買って食べた。幸せな気持ちにしてくれた。高ければ良い、というわけではないことも多い。

なお、人間は、自分で素晴らしいラフランスを探しまくらなくても、他の人から、どこに美味なラフランスがあるか、の情報をもらうことができる。それが信じるべき情報か、そうでないか、の「判断」を適切にできた人は幸せな気持ちになれる。

山形を歩いていると、その美味しいラフランスを育ててきた人達にときどき、出会った。美味しい中身のラフランスを育てることができるようになるまでには時間と根気が必要なのだと感じた。育ててきた人達の苦労と努力に感謝しないといけない。

さて、各自にとっての美味なラフランスとは何か、考えてみよう。

■力とは何か?(2021年3月13日)

私が学生のとき、ある先生が「生命と機械の本質的な差異についてのべよ」というレポート課題を出したことは以前、記した。これは、私のライフワークの一つになっている。

なので、次世代の学生にとってライフワークになりうる課題を私もだすべきだろう、と考え、 5年ほど前から「力とは何か?」という課題を出してきている。特に、「粒子間に引力が働くのは何故か?」という質問を投げかけている。「ポテンシャルで説明できる」というのは答えにならない、と言っている。「ポテンシャルが何故、発生すると考えられるのか?」と聞いているのである。

人間という粒子同士の間でも、引力や斥力に相当しそうな力もありそうだ。近い考えや同じ目標を持つ人間が集団をつくることもあるから、である。私の研究室が提示してきた「脳の理論(Onto-biology, Prognostic medicine, Artificial Genius)」は、この問題にもそこそこ答える可能性を示している。

■3年後に確認すべきこと(2021年3月19日)

最近、世界の自動車メーカ数社は、BEVのみにしていきたいという方針、を公表した。ただ、エンジンは協力関係のある企業に任せるか、他社との共同開発、といったことも含んでいるようである。電池も全て自社開発、ではない場合が多いようなので、実質、単独メーカの意志、という印象を私は受けていない。つまり、自動車メーカは、いずれも、他社との連携で、エンジンとそれ以外を平行して進める、というのが実態だろう。エンジン、電池、燃料電池等の全方位を単独でやるといっている企業もいくつもある。

ユーザーの立場からみた、自動車の動力源に対する考え方・希望は、以前、述べた。消費者は、環境・価格・信頼性も含めた魅力、で総合的に判断せざるを得ないはずである。

各国の立場で考えると、国が主導で、「BEVのみにする」のか、「HEV+BEVにする」のか、「HEV+BEV+FCV+水素エンジン」のか、といったことを「決める」のであれば、その理由を更に明確に示すことになるだろうと考えている。脱炭素なのか、気象変動対策なのか、経済方策なのか、などである。 表現の仕方は様々かもしれないが。 いまのところ、政府が出しているのは、方針、である国が多いようだが、規則、になる時には、である。

地上と航空用について、3年から5年後、もう一度、動力源に対する3者(企業、消費者、国)の方針が、実際にどうなったか、見る必要があると私は考えている。長期的には、結局、気象変動対策と経済対策と消費者が感じる魅力という指標のバランス、で決まってくるはずだろう。昨年あたりから、「現代のカンブリア紀」に入ってきた印象をもっているが、今後の数年間、私のスタンスはいままで通りで変更しない、ということである。企業とは違う形(Fugine+Fusine+生命医科学+人工天才脳+熱流体物理学)での全方位で進めば、「現代のカンブリア紀」の後にフィットすると考えているからだ。

■日本の中古車の行き場(2021年3月19日)

先に述べたように、日本の中古車は、まだまだ、使える車が多いと感じている。なので、日本から、東南アジアやアフリカも含めた多くの国に、中古車が輸出されているだろう。もしも万がいつ、日本で2050年頃に、エンジンだけの車を運転してはならない、となった場合を考えてみた。そうなると、日本中にある中古のエンジン車は、海外に更に輸送されて売られることになるのではないか。日本からだけでも数千万台レベルではないか。そうなると、受け取った国々は、給油場所を設置することになる。となれば、徐々にその後、低燃費のエンジンを載せた新車を買うという流れになるだろう。そのあたりまで、HEV技術を持つ企業は意識をしているはずである。

アフリカ等では、電気はまだまだ、家庭の照明・冷蔵庫・冷房などに使うのが優先されるのではないか、と思うのである。

「BEV」か「HEV(+水素エンジン)」のいづれか、ではないだろう。低燃費エンジン車とHEVは今後も更に売れ、力のある企業はBEV+FCVで更に2倍を超える世界市場を狙っている、と私は思っている。

■2つの公開時期(2021年3月20日)

研究者がなした業績は、様々な学会がPublishする学術論文として公表することが多い。その論文の長さ、体裁、審査基準、採択率等は学会によって異なっている。これらの公開は基本的には一回だ。

研究者がなした業績を公表する方策にはもうひとつある。特許だ。これは、(言語は国によって異なるものの)体裁やルールは、比較的、世界的に統一されている。その特許は、出願してから一定期間経過後、公開される。そして、その後、権利化された特許は、もう一度、正式な特許となった際に公開される。二段階で公表されるのである。最初に公開された時点から、権利化されるまでに時間があり、その間に、その独自性や意義が世界で議論される、ということである。(しかも、最初に出願からしばらくは公開されない期間もあるので、それを加えると、三段階になる。)

私は、この複数段階の公開方式、を拡張して利用してきた。「査読のある学術論文に掲載された後、しばらくの間、研究室配属する以前の学生には少しも説明しない」というのもそのひとつである。例えば、素粒子に関する理論モデルは2011年頃から論文にしてPublishしてきたが、研究室配属前の学生達に対する研究室説明会で、このあたりを説明したのは、2018年あたりからである。何故か? ひとつは、私がわざわざ、説明しなくても、既に公開した最新の学術論文を自ら探す、ことをしてほしいからである。実際、私の研究室に来る学生の中にはときどき、自分で調べてきた学生もいる。情報は与えられるものではなく、自ら探すもの、だということを言っておきたいのである。

でも、理由はもうひとつある。論文を投稿する際は、事前にかなりの時間をかけて、間違いがないことを確認しているのだが、査読を通過して公開された直後では、まだ、ミスなどの可能性がわずかにあるので、その後、数年以上読み返して、何度も再確認をしているからである。ミスの心配、というよりも、万がいつ、学生が配属された後にミスが見つかった場合、学生がやりたかったことができなくなると、その学生が困るからである。なので特に、大きな飛躍した研究成果の場合は、長い時間あけることにしている。

■ 2050年頃迄に花開くであろう新動力エネルギー源(2021年3月21日)

「HEVの次は、エンジンを持たないBEVだあ!脱炭素だ!」と言い出す人がでてくることは、トヨタさんがHEVを出した瞬間から思っていた、と、以前、記した。「言い出す」のが遅すぎる、と思っている。BEVが半分以上を超えるのは資源枯渇の面で難しいので、水素利用に進まざるをえない。なので、燃料電池車(FCV)も少しづつ増えるだろう。そこで、水素エンジンの時代がくる。そうなると、Fusineが早まることにもなるからだ。凝縮系核反応は、まずは、水素が前提と考えられるからである。要するに、環境エネルギーの真の変革をおこすには、ドミノ倒し、が必要なのである。

これ(Fusine)ができれば、21世紀後半にアフリカも豊かな新天地として発展し、しかも、人類は宇宙と地球の間を自由に往来することになるだろう。そして、それは、国と国の間の壁を溶かすことにもつながっていくのである。

年寄りの大風呂敷、だろうか。いや、このくらいの考えをもつ若者は、私の研究室のメンバーやその卒業生の中にもいるはずだ。NASAの研究テーマの中でも、太陽系外の生命探査、が重要になっているはずだから。

■2050年に私は米寿:阿弖流為(アテルイ)に思いを馳せる(2021年3月21日)

私は、2000年4月から5年間、山形県の米沢市にある山形大学工学部で仕事をさせていただいた。1000年の節目の年に家族で移住し、新天地での新しい仕事になることを、不思議な縁だなあ、と思ったものだった。新たな地で、西暦3000年までの1000年間を考えよ、と言われた気がした。

そこで、高橋克彦著の「火怨」と「炎立つ」という本に出会った。登場人物の一人に阿弖流為(アテルイ)という人がいる。坂上田村麻呂と戦った実在の東北の英雄、である。東北地方に住んで、東北の土地の人達と東北の空気を共有しながら、その土地の歴史的英雄の物語を読むのは、東京で読むのとは感動の質・深みが違う。

坂上田村麻呂との闘いを繰り返し、余力がある状態で死を迎える際、「次の世代の若者達に意志を継いでもらう」といった場面が出てきた。人間は、どうしても、自分が生きている間のことだけを考えがちだが、「数世代をつないで、100年後にあるべき姿を追求する」というのだ。

もちろん、言うまでもなく自分がいきている間のことは重要である。東京では3年後の商品化のことが重要課題だった。でも、1000年の節目に新天地に移って、次の1000年のことを考えた後、また、次の100年のことを考えてみなさい、と言われた気がしたのである。

科学技術の中身を見出して提示するだけではなく、それを如何に、次世代に伝えるのか、も重要になる。幸い、私は、大学で、教員の立場にいた。次世代を育てることの重要性を再認識したのだった。

ただ、以前書いたように、「長針」と「短針」の2つを追い求めていくとなると、長期計画の短針のことはなかなか、粘り強く進めることは難しい。私一人の問題ではないからである。次世代を育てるには、長い時間と、とてつもない根気が必要だからである。

当然、私が若い頃は、まず、私自身が独自性の高いアイデアや成果を出せることに主眼を置いてきた。そのくらいできなければ、次世代を真に育てることなどできないからだ。私が50歳を過ぎたころからは、次世代の若者の相談相手になることに時間を割く毎日である。現在、59歳、2050年には88歳(米寿)だ。

■50年前の早稲田大学と50年後の早稲田大学(2021年3月21日)

私が、日産自動車で仕事をはじめてから、様々な人と出会った。その中に、韓国の主力国立研究所のH教授がいる。私の恩師の親友の一人である。その方は、日本に来た際、早稲田大学の本部キャンパスを一日かけて、じっくり、いろいろと見学された。 H教授の父親は、何十年も前に早稲田大学の文科系の学科を優秀な成績で卒業後、韓国の柱となる大学を創設されるまでなされた方だったそうで、その足跡とルーツ(起源)をたどられたのである。 父親の「秀」が並んだ成績簿も見られたそうである。 数十年前まで日本の国立大学は、外国の優秀な若者でも入学を許可しなかったため、当時から世界に門戸を開いていた早稲田大学で学んだそうである。この話を聞いて驚き、心が熱くなった。 50年以上前に、早稲田の恩師達が、大学の在り方を先取りしてみせてくれたことに感動し、私がその後輩のひとりであることに誇りを感じたのである。 世界の若者達を抱き、静かに見守って、育んできてくれたことに感謝すると同時に、とてつもない仲間とエネルギーを得たと感じたのである。

早稲田大学は、中国からも昔から多くの若者を受け入れてきていて、現在の中国を牽引している方々の中には、早稲田のOBがたくさんいると聞いている。

これを読んでいる早稲田の学生さんたちは、これらのことをよくかみしめてほしいと願ってる。 かみしめることによって、その人の中に無限のエネルギーが宿るからである。

遣隋使、遣唐使、漢字等を思い出すと、日本はアジアの大陸から学んだことが多かった。日本人の中には三国志を読む人も多く、諸葛孔明を知らない日本人は少ないだろう。なので、早稲田大学に、アジアの大陸のやる気のある若者達が多く学びにきていた、と知って驚くとともに、早稲田の先人達のことを、更に知らなければならないとも感じた。

なので、中国や韓国で、早稲田大学の名前は、日本を代表する大学として非常に良く知られているのである。早稲田で学んだ後、母国に帰ってからも、早稲田のことを周囲に話しているからだろう。数年前、韓国のプサンで開催された国際学会の晩餐会に、私の研究室の学生3名と一緒に参加した。その際、韓国のある国立大学の先生は「Oh!! Waseda!!」と言いながら、熱烈な抱擁や熱い眼差しを伴う歓迎をしてくれたこともあり、このことを再確認した。言い過ぎ、としかられるかもしれないが、韓国・中国の人達にとって、早稲田は母校のような存在なのだ、と私は感じたのである。

50年前の海外の多くの熱い意志を持った若者も、現在の国内外の若者達も、私も、高田馬場と早稲田の地を共有し、そこに抱かれ、そこで、意見を交わしながら育まれてきたのである。

未来のために!

私が所属している理工学術院も、40年以上前から他に先駆けて、「理工」という名称と学部/大学院を提示してきている。理学を深め、それを武器として、工学・技術を生み出す、という姿勢に若い頃、共感を持った。国内の理学部・工学部では、最近になって、「理」学部と「工」学部を合体させた名称にするところが増えてきている。また、機械科学・航空宇宙学科/専攻は2007年に機械工学科が2つに分離した際にできたものだが、この歴史も100年を超えており、その間、「理工」という旗を提示・支持してきた先生方も多くおられたはずである。

現在、そこで仕事をさせていただいている私は、50年先の科学技術のあり方と、その育み方を示していかなければならないのである。次世代を担う若者達と一緒になって、である。

■樹齢1000年の桜と1000年技術(2021年3月23日)

2000年4月1日に山形大学に教員として赴任した直後に、山形の桜に出会った。息子が通い始めた米沢の小学校の桜は樹齢100年を超えていたが、東京の桜よりも、生き生きとして、一週間くらい、咲き乱れていた。

米沢から車で1時間ほどの長井には、樹齢1000年を超える桜がある。久保桜、と呼ばれている大樹だ。坂上田村麻呂が、その土地の豪族の久保氏の娘に送った桜、という悲恋伝説の桜である。(私の著書「生命のエンジン」に写真も掲載した。)

この桜の絵を描こうとしたことがある。ところが、この木の存在感を絵にすることができなかった。私が納得できる絵にならなかったのだ。50年程度しか生きて来ていない私は、1000年を超える年月を経て存在してきたこの樹木に内在するエネルギーに圧倒されたのである。絵を描いてみることは、自分を理解することでもあるとも感じた。

その桜の前に立った瞬間、日常を忘れ、「1000年後まで生きる新たな技術とは何か」について、しばらくの時間、思いを馳せたことを思い出す。

今年も数日後に、東京の桜が満開になる。

■保存則と保存性(2021年3月29日)

高校の物理で教わる基礎力学は、質量・運動量・角運動量・エネルギーの保存性に関する知見を与えている。摩擦や熱伝導がない可逆な現象の場合は、それらの量は時間が経過しても保存される。しかし、大学の初めに、自然界では非可逆な現象ばかりであることを再確認する。摩擦の存在を無視できない場合を考えると、運動量(運動エネルギー)は、保存せず、時間とともに減少し、その分が、温度の上昇とになる。こうなると、時間経過に従って、各種の物理量は保存しない。しかし、保存性を考えることは重要なので、非可逆性があっても保存則と呼ぶことも多い。数学ではないからだ。

しかも、光の速度に近い場合、質量さえ、保存しない。なので、非可逆かどうかに関わらず、数学的に考えれば、この世の中の現象は全て保存しない。物理として、保存性は考えてないとならない。

■基礎・応用・発展:高く飛びたければ深く学べ(2021年3月29日)

先端的な研究、と呼ばれるもの(呼ぶもの)には、2つある。一つは、先端的に見える研究、と、時間に耐えうる先端的な研究、である。いずれであったかは、時間が経過しないとわからない。ある程度の時間が経過した後、一度、停滞しても、その後、急激な進化を見せるものもある。

時間に耐えうる先端的な研究を生む原動力として、基礎力は重要である。樹木であれば、「根」に相当するだろう。ただし、基礎力だけに固執していてはならないことは言うまでもない。そのためには応用することが大切で、更に、応用しているときは発展(飛躍的・挑戦的な課題)を意識する必要もある。

私が、学生の頃、先輩から聞いた言葉がある。「高く飛びたければ、深く学べ」である。これは「基礎力の重要性」とは違うことを含んでいる。積極的なのである。

■VHSとβ方式の次にきたもの(2021年4月7日)

数十年前、ビデオテープでは、VHS方式とβ方式という2種類が競争していた時期がある。β方式の方が小型で画質も良いのではないか、と言われていたことを思い出す。ところが、VHS方式の方が市場で増加した。ユーザーにとって、性能の善し悪しは重要だが、それ以外の要因が働くこともある。

昨年あたりから、HEVかBEVかという議論が、政府の方針も絡んで過熱してきている。VHS方式かβ方式のビデオか、に似たような状況になっているようにも感じている。

ただ、ビデオテープの直後に登場して市場をさらったのは、DVDである。HEVとBEVの後も、それら以外の方式の動力機構が現れるのではないか。進化は、し始めると急激に加速するようだからだ。DVDの直後には、フラッシュメモリーが世界を圧巻したのである。

DVDに相応するのがFCV、フラッシュメモリーに相応するのは、水素を用いた大幅断熱エンジン(H-Fugine)と素粒子のエンジン(Fusine)、だと私は考えている。

■固体電池の可能性(2021年4月8日)

私は、「自動車や航空機の動力源として電池が普及する時期」を予測するために、デジタルカメラの電池がどう進歩するか、をみてきた。

20年くらい前に、リチウムイオン電池がデジカメに採用されて普及したが、その後、いまだに、自動車の動力源としては成熟していない。

なので、デジタルカメラの電池が、固体電池に置き換わる時期を意識してみている。上杉謙信が川中島の戦いで、信玄の炊飯の「煙が多くなる時」を見て、それが、戦いの始まるタイミングと察知したわけだが、現代では、固体電池がデジカメに採用される時が「」だと考えているのである。もちろん、デジカメよりも前に、自動車に採用される可能性がゼロとは言えないが、まずは、小さな電池で市場に出回ると考えるほうが自然だろう。なお、固体電池以外もありえるが、最近は、まだ実用化に遠いものも含めて電池については、みずから宣伝を多くやっているので、情報収集・情報選択はしやすいとも思っている。

■航空宇宙用エンジンをやりたいならば(2021年4月9日)

ロケットは、一回だけの使い切りの時代から、何度も利用する時代に入りつつある。宇宙空間に行って帰還したら、地上にゆっくりと着陸させ、また、その後、飛び立つことを繰り返すのである。大気圏から離脱するには、マッハ数が20(音速の20倍程度)をこえていかなくてはならないわけだが、地上に着陸する寸前では、当然、亜音速から速度ゼロになる。この着陸時の安定性、信頼性が問題のひとつになっている。広いマッハ数範囲での安定な作動が、従来以上に求められているのである。

私は学生の頃、高速気流を研究している先生に指導いただいた。ただ、将来、地上と宇宙を何度も往復する航空宇宙用エンジンに関わるのであれば、まず、自動車用エンジンの仕事に関わるのがよい、と考えた。街中の信号で一時停止した後、発進して加速したあと、再度、減速して停止することを何度も繰り返して低速走行する時間が長く、しかも、高速道路やサーキットに行けば、文字通り、高速走行も安定して走れるからである。ロケットで地上と宇宙を何度も往復するための知恵を得るためには、まずはレシプロに学べ、と思ったのである。急がば回れです。

ロケットも含めて実用化・商用化している航空宇宙用エンジンのほとんどは、高速で気体を排気しているのだが、その燃焼室での気流速度は基本的には低速(亜音速)である。この意味でも、地上用途のレシプロエンジンの燃焼状態と本質的には変わらない。地上用も航空宇宙用も、予混合燃焼か拡散燃焼という用語を使って説明されるのである。

外見・名前・肩書ではなく、まずは、中身を物理学的に考えて、先読みすべきである。なお、このことは、航空宇宙分野に限らないことを記しておきます。例えば、自動車用ではエンジンと電池のいずれが良いか、ではなく、それぞれの技術の深み・新規性・独自性・発展性の問題であり、社会や企業はそこを主にみているのです。私の研究室の修士課程で生命医学の理論研究をやって、生命をほとんど扱ってきていない企業に入社した人も何人もいます。

私の場合、大学で学んだ高速気流の力学は、多数の高速噴流を衝突させるエンジン原理(Fugine、Fusine)の提案に直接むすびつき、自動車用エンジンの研究開発で学んだことは、「広いマッハ数域での安定燃焼」に挑戦する原動力になっており、しかも、エンジン内の現象が生命現象と相似であることも多く、新たな生命医学も提示してきています。

■最近うけた相談(2021年4月19日)

先日、入学したばかりの学生数名から、将来について相談を受けた。共通していたのは、「この学部や学科のカリキュラムをみたら、自分の将来に直結する講義や研究があまりない。 他大学にも見つからない。 既存の研究をやっていって納得できるか確信がもてない。」というものだった。この種の質問は、過去20年間、3年生以上の学生からもときどき、されてきた。その場合の私の答えのひとつは「君が10年後にやりたいことの講義が今、十分にあったら、君が10年後以降にその分野を先導できないでしょう。今、この学術院で講義や研究がされていない、ということは、その意味で、ラッキーなことなのです。また、このことで悩んでいる人は、現状のカリキュラムや研究内容に大満足している状態よりも0.5歩前進している。」です。ただし、まだ、誰もやられていないのだから、その狙いを実現させるには、基礎(既存の講義など)を大事にしながら自分で考え、具体的なアイデアを出し、それを相当の努力で進めないとならない、とも伝えています。また、一人で悩むのではなく、仲間や先輩と雑談をしてみることも重要です。

このような話をした学生の中には、その後、髪の毛を染めるのをやめ、私の講義を最前列で聞くようになり、修士を終了後、希望にあふれた表情で社会に旅立った若者もいました。

私も、大学に入学した直後、早稲田に入った喜びに浸れたのは最初の数日だけでした。数日後に手にした要項やカリキュラム表をみると、航空宇宙に関する内容があまりなく、先輩方に就職先を聞いてみると、航空宇宙産業は規模が小さく、新たなエンジンの研究といった課題をやっているところもほとんどない、と感じたからでした。海外で開発されたエンジンの一部を分担しているという印象だったのです。航空宇宙産業は今でも、自動車産業に比べるとかなり規模が小さいという状態は変わっていませんが、少なくとも、新たな動力機構の提示という点では、私のところで進めています。太陽系内外の惑星の資源開発に近づくには、従来よりも格段にパワーが高い動力源が必要で、それができれば、宇宙利用も急速に発展するだろうと考えているからです。なので、この研究の具体的なアイデアにたどり着くまでに、手順を追って一歩一歩進めてきたのです。20代の頃は、乱流や燃焼の数値解析方法の提示とそれに基づく数値シミュレーションモデルを構築して、まずは、自動車エンジンの改良からはじめたのでした。ただし、いずれは、航空宇宙用エンジンにも用いることを意識して、かなり早い時期から、超音速流状態での計算も可能にしてきました。自動車用エンジンでも排気行程のごく一部の時間やノッキング現象では、高速気流が発生するため、でもありましたが。

■貯めと溜め(2021年4月20日)

ここで話す「貯め」はお金のことではない。アイデアや技術の「蓄積」のことである。ひと月くらい前のつぶやきとささやきの欄に、「研究成果は論文で公開後、時間をあけてから、講義などで学生に説明してきている」ことを記した。当然、これは、アイデアや技術の「蓄積」をももたらす。

この「貯め」は、若い頃から、いろいろな側面で行ってきた。例えば、毎日、仕事はたくさん同時にふりかかってくる。Eメールはいろいろなところからくる。悩ましく、やっかいなものも少なくなく、直ぐに返信できないものある。情報収集して調査してから考えて、解を見つけるまでに時間がかかるからである。ただし、メールの中には即答できるものもあり、これには、極力、直ぐに返信してしまうようにしている。メールが「溜まる」と、それだけ、頭が疲れてアイデアが出にくくなり、その結果、アイデアや技術の「貯め」がしにくくなるからである。即答できないメールは、付箋紙を含むいくつかの方法で、「近々、やるべきことを記した短いメモ」を集めた「タスクリスト」にしておくようにもしている。「貯める」べきなのは、頭の中の「ゆとり空間」なのである。

ただし、ゆとり空間が増えすぎると、人間、眠くなってアイデアもでない。私が、ゆとりある時間を多くとれるわけではないことも記しておきます。

■光子の干渉(2021年4月21日)

中学・高校で、多くの人が「光の干渉」について学んだと思います。2つのスリットを通過した光が、照射された壁に干渉縞をつくる現象です。これは、光の波としての特性を観察したわけです。

詳細は知らないのですが、15年くらい前に、ある光技術の研究開発組織(浜松フォトニクス)が私に見せてくれた実験(論文)について、以下に説明します。 2つのスリットを通して連続的に出していた光の量を極端に減らして、「2つのスリットに向けて、非常に短い時間だけの光(光子ひとつだけ)を出し、その後、長い時間、光を出さずにした状態にして、また、非常に短い時間の光(光子ひとつだけ)を出す」ことを繰り返すことをしてみるという実験でした。光子は1つしかだしていないので、同時に2つのスリットをとおらないとおもうのですが、繰り返して光子を出すと、徐々に壁に干渉縞が現れてきたのです。このような現象を見た時、大変驚き、今でもその映像を鮮明に覚えています。それぞれのスリットを光子が交互に通過したとしても、通過する時刻が異なるので干渉縞がでるはずはない、とも思いました。 これは、連続的に出された「光の干渉」ではなく、いわば「光子の干渉」であり、これは、決定論的な連続体仮定を深めて使ってきた私には理解できませんでした。

光技術を専門にしている人達の間では、昔からよく知られていた現象なのだと思います。なのである程度、自分の専門分野を深めて節目の成果を出したら、他の分野との交流も重要な意味をもつことがあります。私は、この現象を知ってから、自分なりに原子よりも小さい世界も研究対象に加えてきました。 自分が深めた専門分野の知識を土台にしたアイデア(絶対零度でも現れる不確定性と境界条件の関係)をもとに理論を構築し、試算をしながら、それと平行して、 今まで触れたことのない分野の本を、大きな書店で半日ほど立ち読みして選定して数十冊購入し、斜めよみすることで、自分のアイデアに新規性と有効性があることを確認し、独自の素粒子理論の提示まで到達したのです。本のヤマをながめたあと、その分野の他者の既発表された学術論文もそこそこ読んで、 学会に自分の論文を投稿するまでに、更に新規性を確認しました。なお、この理論は、100年間、謎であった管内の乱流遷移位置と入口の乱れ強さの関係を解明する糸口をも提示しています。

なお、自分のひとつの専門分野を深めて成果がでて、それが知られるようになると、「他の分野の方々が、本には書いていない面白いデータやアイデアを見せてくれる」ということに何度もめぐり合った、ということを付記しておきます。(注421-1) そして、そのたびに、新たな分野の本のヤマを購入してきています。 ただし、その本のヤマの全て理解しようとはしてきていません。それぞれの本の中に数ページ、独特で価値のある記述があればよい、くらいに考えてきており、なので、数十冊購入してきたのです。

(注421-1: 上記の光子の干渉のデータを見せてくれた人が現れたのは、私が、本(生命のエンジン、2006年)と日経サイエンスの解説記事(2005年)を書いて公開した直後、浜松フォトニクスが支援している財団が主催する講演会に招待されて講演したときでした。似たような経験は、エンジン・流体物理学・生命の研究などでも数回あります。)

■ドローンではない「空飛ぶ車」のきざし(2021年4月29日)

H社が実用化・商用化した小型航空機は、ジェットエンジンを翼の上側に配置した。これは空気力学的な効果がありえるが、もうひとつ、重要なことがあると私は思っている。翼の下にジェットエンジンがぶら下がっていると、着陸時にそのエンジンが地面に接触しないように、機体の底面をエンジンの直径よりもある程度、上に配置しないければならないので、車輪と機体の間に「フラミンゴの足」のような長い支柱が必要になるわけだが、この小型航空機ではそれが不要になる。その結果、機体の下側は車輪やサスペンションも含めて、自動車の足回りの構造や技術などを流用でき、地上での乗り心地もよく、価格も低くできると思うのだ。(着陸時の姿勢制御の電子機器の進歩がこの構造、配置を可能にした面もあろう。もちろん、これが、地上での走行を、従来の自動車ほどに自由にできる状態にはなっていないし、そこまでするのは容易ではない。まず、高速の排気ガスの運動エネルギーで動力を生成するジェットエンジンの形態では、車の近くを歩く人にとっては、強風と騒音でたまったものではないし、動力への変換効率も悪い。NOx, HC, CO, PM等のEmissionsの問題も対処しないとならない。私の研究室で提案している新たなエンジン(Fugine)は、これらの問題への対処することも意識してきたのである。なお、大きく張り出した翼は、折り畳み式にすることになるだろう。)

自動車会社が航空機に進出するには絶好のアイデアである。どのような革新も、ゼロから構築するのは大変なのである。

以前、CCD素子を土台にして、デジタルカメラの画像素子ができた例を話したが、それでも、その進歩を実現するには、20年程度の時間がかかっているのである。

■水素エンジンレースとリサイクル(2021年5月9日)

T社が、4月28日に水素エンジンでレースに参戦したというニュースを知った。私が昨年末あたりに、水素エンジンが増えるだろう、と予測したことが、早々に加速するかもしれない。詳しい情報は得ていないので正確ではないかもしれないが、この水素エンジンは、市販されているガソリンエンジンの一部を変更した程度で参戦したらしいからである。

T社は、燃料電池車(FCV)用の水素燃料タンクに独特な高い技術を持っており、既に、FCVを市販しているので、その信頼性もかなりのレベルに来ていると感じていたところ、やはり、それを水素エンジンにつないでレースに出たようでもある。私も、この方式(T社独自の水素燃料タンク+水素エンジン)も考えてきた。後は、私が提示してきているような方式ででも、エンジンの熱効率をFCレベルにできれば、価格も低いので、ユーザーには大きなメリットがあるだろう。

また、今日のニュースで、「フランスでは、家電製品等を修理・部品交換しやすい構造・構成にする動きが高まっている」というものが出ていた。「車の一部を交換してバージョンアップすること」も、少し前に予測し、このHPに記載した。まだ当分の間は、世界中の全ての電力を風車や太陽電池にすることができない。しかも、風車や太陽電池の製造時にもCO2はでるはずであり、しかも、その製造装置を製造する際にもCO2がでるだろう。 その「製造装置の製造」の連鎖は更にあるわけだ。いやはや、一体、人類はどうなるのか?更にこれらは、10-20年程度おきに繰り返してリプレースされるだろう。なので 私の直感的な考えではあるが、気象変動問題(温暖化問題?)にもっと対処すべきだとすれば、確実性が高いのは、「20年以上使ったガソリンエンジンの一部もリサイクルして水素エンジン(低炭素燃料のエンジン)の部品にバージョンアップすること」かもしれない。

■若者達の先見性(2021年5月14日)

2000年に大学に移って数年たったところで、就職担任をした頃、実力と活気のある大きな自動車メーカよりも軽自動車を主として開発・販売している企業に就職する「元気な学生」が増え始めた時期がある。その時は、少し不思議に思っていたが、その後、ふと、その理由に気が付いた。2000年よりも少し前だったと思うが、軽自動車の排気量が660㏄にあがるということになったので、そのニーズが高まることを、若者達は感知・予知していたからだろうということである。660㏄という「煙」を学生達は見ていたのである。実際、その後、軽自動車の販売台数は飛躍的に増加した。

私は今から就職活動するわけではないので、先を考える努力が不足してきたと感じたのである。このように、次代を背負っていける可能性の高い学生に、研究室内外でしばしば、会い、私はそろそろ不用か、と思い、肩の力が抜け、心休まる時も増えてきたが、若者達にはまだまだ、負けるわけにはいかない。若者達を更にのばすために。

大学教員の主たる仕事は、講義や研究で学生に力をつけてもらうことで、これらはカリキュラム(便覧・シラバス)に載っているが、就職のアドバイスは、カリキュラムにはない。つまり、その意味ではボランティアでやっている。しかし、 就職担任という仕事は、若者達の人生を律速するであろう重要事項に直結している。 この意識で若い教員はやってほしいと願っているが、更に重要なことは、どんな仕事でも、教員にプラスになる、ということも付記しておく。学生から学ぶこともあり、自分を鼓舞するエネルギーをもくれるのだから。

私が担当している講義の中には、3時間連続で何週間も立ちっぱなし、話つづけ、の授業などがあるが、これらは、脚力と肺活量の維持にも貢献してくれているのである。

■オンライン講義の生活から教場へ(2021年5月21日)

昨年(2020年度)は、全ての授業(講義)がオンラインになった。自宅で講義の動画を作成したり、ライブでのネット講義だった。教員も初めての経験で苦労したこともあるが、学生は、自宅の狭い空間でひとりきりの生活になり、かなりやるせない気持ちになることも多々あったのではないか。

なので、学生間のコミュニケーション不足になっていないか、と心配した。例年よりも、友達ができにくくなっていないか、とも心配にもなった。

だが、その懸念は、先月から教場での講義に行って払拭された。新コロナが現れる前よりも、挙手をして発言・質問する学生が増えており、授業中に寝てしまう学生も減ったのである。昨年、会うことができなかった時間を取り戻そうとするかのように、会ったときの時間を楽しんでいるようなのだ。私の研究室のM2学生の中には、就職活動中、自宅でオンライン面接ばかりになり、研究室の仲間ともっと話たくなったと言っていた。

ほっとした。

■クラウンとスカイラインの開発中止の報道(2021年6月12日)

昨年末にクラウンのセダン、今日の新聞ではスカイラインのセダンがなくなるという記事を見た。長い歴史をもつ名前の車である。脱炭素が一層、叫ばれる昨今だが、ユーザーの多くが大型セダンから燃費の良い小型のセダンや軽に移ったというわけではないようだ。日本では、多用な用途で利用でき、室内空間が比較的広いSUVにシフトしてきたことも理由のひとつだろう。ユーザーには、やはり、脱炭素よりも重要なことがあるのだろうか、と思ってしまう。

SUVは車高と価格が相対的に高い分、大きな電池を搭載しやすいという点ではBEV化に向いている面があると思うが、長距離ドライブする頻度が増えると考えると、いたちごっこかもしれない。

クラウンとスカイラインの名はSUVとしては残るのだろうか?Zは次期型が発表されているものの、開発者の思いとユーザーの思いと環境問題の間のジレンマの中で、先が見通しにくいように思う。

■偏微分的+時間積分的な仕事の仕方(2021年6月17日)

例えば、材料力学や熱流体力学の問題では、3次元空間x、y、zと時間tの4次元空間における物理量F(温度、圧力、密度、流速等)の分布を調べる。この場合、私達は、4次元x、y、z、tの「それぞれの方向の変化」をみて、それら4つを合算して分析する。この「それぞれの方向の変化」をみるには、数学で習う偏微分を用いる。例えば、x方向のFの偏微分

は、xの変化に対する物理量Fの変化なので、y、z、t=一定とする。(ただし、空間がxだけの1次元方向の変化しかない場合で、定常な状態・現象では、時間変化もないので、偏微分ではなく、常微分記号でよいことになる。)

研究開発を含め、多くの仕事でも、この偏微分法的な考え方、見方は重要である。

例えば、エンジン性能を向上させる実験をする際、x、y、z、tに相当するのは、エンジン回転数(か、吸入空気量)、燃料噴射量、圧縮比、燃焼室直径などを含めて非常に多く存在するパ入力ラメータ群である。物理量Fは、熱効率(CO2排出量)、最大出力、NOx排出量、燃焼に起因する騒音振動レベル、等のアウトプット量である。

この検討をする際、初心者は特に、パラメータをひとつづつ変化させる方がよい。2つ以上のパラメータを同時に変えると、得られたアウトプット量の変化が、どの入力パラメータに強く起因したかがわからないからである。この仕事のやりかたは、先が見通しにくい課題には有効だと考えている。まず、どのパラメータが結果を大きく左右するのかを見た後で、パラメータを絞り、そのパラメータに集中して変化させることで、一歩一歩確実に進む可能性が高くなる。偏微分法のような仕事の仕方は、数学者、物理学者等が、実際の科学的な難問に立ち向かう際に使ってきているのだから。

ただし、社会に出ると、入力パラメータをひとつづつ変えている時間のゆとりがない仕事も多い。もちろん、他の研究室では、いくつかのパラメータを同時に変えるやり方をとることもあるだろう。また、課題、テーマによっては、最適な解(か、それに近い解)が複数箇所ある場合もあるので、慣れてきたら仕事の仕方はいくつか持った方がよい。例えば、過去数年間のデータをときどき見直して、それも併せて全体を把握してから、次の検討の方向を決めることもその一つである。これは時間方向の積分法に相当するだろう。

■「人生を完全燃焼する方法」と「論文・講演発表の基本」の追記(2021年7月3日)

私の研究室のHomePageのTOPページに来ると、そのページの上に、クリックする英語のボタンが横並びにしてある。Researche、Professor、Member等である。Professorをクリックすると、私から皆さんへのアドバイス等を記載しているわけだが、最近、そこに追記をしたので、もう一度、参考にしていただけると良い。例えば、人生を完全燃焼する方法の後半には更に具体的な事項に記し、論文・講演発表のところには、pptと発表原稿の作成方法の基本事項も追記している。

■自動操縦用の画像素子(2021年7月3日)

完全な自動操縦はまだ先のことのようだが、人間の運転をサポートする技術と実装は更に進むと思っている。その際、重要なもののひとつは、動画の撮影カメラのレベル向上である。できるだけ、素子数を増やして解像度は上げて、しかも、夜間の微弱な光でも検知できる画像素子が必要になる。ただ、更にふと思ったのは、できるだけ、画像素子が小さい方がよいかもしれない。これは、軽量で安くなることだけを意図していうのではない。画像素子が小さいほど、レンズも小さくできるので、被写界深度の問題が薄れて、近くのものも、遠いものも、ピントが合う方向だからだ。瞬間瞬間で、車前方の手前側も離れた方も認知しやすくなる。もちろん、画像素子が小さくなると、暗いところでは光を感受しにくくなるわけだが、自動操縦用や工場の監視カメラ用の小型画像素子はニーズが高まるという点で、これからの重要な研究開発事項と言えるかもしれない。

(注:風景写真、人物写真の撮影では、できるだけ、画像素子とレンズは大きくして、限定された被写体だけにピントを合わせ、その前後は、ぼかすことをやることが多い。人間の眼が見る画像に近くするためでもあろう。しかし、自動操縦用のカメラの目的は違う。)

■今年の3年生の大進化を期待して(2021年7月16日)

私が所属する学科の今年の3年生に、講義の教室等で、まだ、一度もあっていないことにふと、気が付いた。私の所属する学部では、1年生の時は学科に分かれていないので会う機会は少なく、2年生だった昨年は新コロナウイルスで、全ての講義等がオンラインになり、今年は3年生になっているが、まだ、教場での講義は限定されているからだ。

ときどき、オンラインのライブの講義でやりとりはしているので、声は聴いていて、元気な学生も多いようにも思う。学生も、新コロナで社会が不安定にもなり、必死で何かを探そうとしているように感じる。あえる時を心待ちしている。

私は、25年ほど前、応用数理学会のJournal等に、進化に関する理論の論文や解説論文を数本書いたことがある。(Macroscopic kinetic equation of a genetic algorithm, Four group equation of genetic algorithm, Introns for accelerating quasi-macroevolution等) その研究から「環境が厳しいときこそ、生命は大進化する」ことも学んだ。なので、この時期に大学で学ぶ学生が「大進化する」ことを祈念している。

■脳内のゆとり空間とイントロン(2021年7月17日)

HPのProfessorの「アイデアを出すための6つの基本事項」のところで、「脳内のゆとり空間」の重要性を書いた。「よく遊びよく学べ」である。このことの重要性は、私が1998年に書いた論文(Introns for accelerating quasi-macroevolution)やその後に、バイオサイエンスとインダストリー誌に書いた解説論文からも論理的に理解できる。多細胞生物が持つDNA中の大部分(イントロン、ジャンク)は、タンパク質をコードしておらず、その意味で「遊んでいる」からである。もちろん、全く機能がないわけではなく、「環境の変化に対応しやすくして馴化や進化を加速する」という重要な機能の可能性もあることを見出している。それ以外に、まだ未知の機能も多々あるだろう。例えば私という生命体は、教員、研究者、父親等の多くの役割(機能)を持っているからだ。なので、遊んでいる時間が長い方が良い、というわけではないことは注意すべきである。

半年くらい前に「カンブリア紀と現代社会の相似性」について書いたが、生命基礎科学・生命基礎医学の研究は、生き方についてもいろいろと教えてくれる。生き方は、織田信長や三国志等の「歴史から学ぶ」だけではない。私たちが学校の授業で学ぶ「歴史」は、たかだか数千年の人類の進歩のことであり、生命の進化過程は、それを含む数十億年の間の「生命の歴史」だからである。

■3つの新たな生命医科学の種(2021年7月22日)

25年ほどの間に提示した生命の基礎理論は3つある。1つ目は、進化や馴化の時間変化過程を4本の連立非線形常微分方程式で記述したもの(Macroscopic kinetic equation of a genetic algorithm, Four group equation of genetic algorithm, Introns for accelerating quasi-macroevolution)である。3次元空間の情報は4つほどのパラメータだけで表現している。これは、「工学的な大進化を生み出す人工知能の創出」を狙った仕事であったが、生命のメカニズムを知りたいという思いもあり、それらのためには、生命を構成する多様な分子群・細胞・臓器等の3次元空間についての深いレベルでの力学的な理解が必要なことに気が付いた。そのような思いで時間をかけて考えていくうちに、生命分子や細胞サイズの必然性を説明する統計流体力学理論(Cyto-fluid dynamics theory, 2001)を提示し、更に、脳や体の形態形成を説明する方法も見出した。これらを組わせて、創造的な人工知能の創出をも目指している。

■青空を切り裂く衝動(2021年7月24日)

昨日の昼過ぎ、オリンピックの幕開けを祝って、ブルーインパルス6機のトライアングル編隊(二組)が飛行し、私の自宅の上空を通過した。文字通り、「青空を切り裂いて湧き出す衝動」だった。見たとき、何故か、体の中に、明日に向かうエネルギが湧きだしてきたからだ。

飛行の1時間ほど前に、私の自宅の上空付近を通過する可能性のあることがわかり、どのデジタルカメラとどのレンズで撮影するか迷った。飛行場で撮影するのと違い、正確な飛行経路・飛行高度・飛来する時刻がわからない状況の中で、望遠レンズで機体を大きく撮影したかったが、視野がせまくなるため、高速飛行する機体をとらえられるか不安だったからである。静止画と動画の両方を撮りたいと思ったのも悩みの一因だった。迷う時間もあまりなくなり、結局、焦点距離24-90㎜相当のズームレンズのついたコンデジ(約1000万画素、1/1.63型画像素子、RAW+JPEGファイル)を選び、中望遠の70㎜で撮ることに決めた。超望遠にして機体が写らない危険をおかすよりは、中望遠で撮影し、後で少しクロップして拡大した方がよいと考えたのだった。カメラと同時に肉眼でも見たかったので、ファインダーを見て撮影することはあきらめたが、モニターに機体群が写っているかどうか、撮影中はわからなかった。空がまぶしすぎたからだ。ヤマカンで、自分の視線と顔の回転に合わせてカメラを動かしたが、3秒間の動画と数枚の静止画が撮れ、しかも、自分の肉眼でみて脳に焼き付けることができた。

なお、常時、カメラの電源を入れておいたが、近くにいた人が「来たぞお」と叫んだ声を合図に、機体を探して何とか見つけることができた。集中力を訓練する時間でもあった。写真撮影は、頭を鍛えるスポーツにもなり得ると考えている。

家に戻ってPCで写真を見たとき、また、体中にエネルギーが湧いてきた。人の眼は普通、焦点距離50㎜あたりに相当するが、70㎜くらいのレンズを常用する人もいると言われるので、70㎜で撮影したことは結果として正解だった。肉眼でみたものに近い感動をもう一度得られたのである。クロップして機体を2倍以上に拡大もしてみたが、機体が画面内に増えるにつれ、美しい空が減り、機体の躍動感が消えたのだ。感動するのは、空と機体の両者の融合した風景、であることを再認識した。(写真はHPのTOPに掲載)

研究でも、重視すべきところがないといけないが、全体を把握することが必要な時もある。

■横須賀で13年・山形で5年・東京で16年(2021年7月25日)

横須賀にある企業の研究所で13年間、仕事をさせていただいた後、大学に移り、それからもう20年過ぎたことに気が付いた。その卒業生の中には、40歳を過ぎた人もいるということである。「40にして惑わず」、つまり、信じる方向にエネルギッシュに進んでいる状態、になってくれているだろう。

■水素エンジン>BEV?(2021年7月26日)

実用化されたFCVに搭載されているような水素の燃料タンクを使えば、水素のレシプロエンジンは、「直接的なCO2排出ゼロ+LCAでのCO2排出低減可能性」を生みだすだけではない。価格がFCVよりも安くなり、消費者にとっては魅力が増す可能性があることを、昨年、述べた。水素の供給場所は、工場や発電所等での水素利用が増えればその近隣で、まず、水素スタンドを増やしやすいことも記した。

水素の値段がまあまあ下がるという見通しもあるが、それが十分ではないとしても、もう一つ考えるべきことがある。それは、水素燃料の値段が高くても、トータルコストでみてユーザーメリットがあるかもしれない点である。BEVよりも水素エンジンの方がかなり価格が安く、長く乗っても劣化しにくいからだ。例えば、10万キロ走るのに必要なガソリンの燃料代は数十万円レベルなので、水素がこの倍の価格になっても、BEVとエンジン車の車両価格の差異までにはならない可能性があると考えている。(ガソリン1リッターで20㎞走れるとすると、5年で40000㎞乗って200Lで、ガソリン1リッターあたり150円とすると30万円である。一方、自動車の車両価格は、航続距離500㎞を超えるHEVで200万円程度、実質で300㎞を超える航続距離のBEVはそれよりもかなり高額であろう。仮に20年後のBEVの航続距離と価格がHEV並みだとしても、劣化しやすさや中古車価格(下取り価格)を考えると更に、水素エンジンの方が勝るか、と思っている。)

BEVで100万円以下のものが出始めているが、航続距離が大きく不足しがちなので、これも主になるとは考えにくい。航続距離が短く、乗り心地等も十分ではない安価なBEVなら、そのカテゴリーでも、水素エンジン車の方が魅力的ではないか、と考えている。

その結果、水素エンジン車、あるいは、水素エンジンのハイブリッド車(H-HEV)が増えれば、水素利用が増え、水素自体の価格が下がる可能性もある。

なので、あくまで、私見だが、日本の「2035年までの基本方針」として「BEV30%、水素エンジン30%、PHEV+HEV30%」くらいを具体的に提示してはどうか、と考えている昨今である。毛利の「3本の矢」に学ぶだ。たとえ、いずれかの矢が折れそうになっても、残りの2本がささえるだろう。実際、現時点における日本の自動車メーカ群の考え方を積分して見ると、このあたりの考えに落ち着くのではないか、と考えている。(なお、電池だけでなく、一部の部品を交換して再利用するエンジン車も増えるだろう。)

私の研究室の6つのテーマのひとつであるエンジン(Fugine)は、大幅断熱+低騒音型高圧縮比での排熱低減、を目指している。これは水素にも基本的に相性が良いので、それが進めば、更に安心感が増すだろう。

20年程前、燃料電池車(FCV)の研究開発が加速された時期があった。ただ、その時の私の直感的印象では、水素しか使えそうにない高価な燃料電池が普及するのはかなり困難だ、ということだった。炭化水素燃料から改質反応で水素をつくって、燃料電池に供給するのも気乗りしなかった。その変換効率等の課題があったからである。なので、その後も、生命研究や理論的研究を除けば、今でも「エンジンの大進化(熱効率60%超+多用途利用)」の研究に大部分のエネルギーを割いている。

■燃料電池に関する私見(2021年7月28日)

ただし、自分なりに、燃料電池には2つの意義がある、と考えてきた。1つ目は、燃料電池と生命の関係である。多くの燃料電池も生命も、「劣化しやすいこと」や「反応させる温度が100℃以下」といった点で共通なので、そこから何か検討すべきことがないかを考えてきた。燃料電池の多くは、窒素を含む大気中の酸素と水素を反応させて主に水を生成するが、NOxがでにくいのは、比較的温度が低い条件で使うものが多いためだ。なので、大気中の微生物が燃料電池の反応膜を食して増殖するか、といったことを調べて学会発表したこともある。燃料電池が生成した水が微生物のゆりかごになりえるからだ。微生物が増えれば燃料電池膜の劣化の要因にもなりえる。2つ目は、燃料電池車の研究開発で生まれる機械的技術の何かの一部が、エンジン車にも新たな息吹を吹き込むのではないか、という視点だった。この2つ目の視点を腰に据えて新聞報道の情報を見てきたので、T社さんがFCVのミライを市販したのをみた頃、その水素燃料タンク+水素エンジンの可能性に気が付いたのである。

ときどき、生命と非生命を対比しながら研究することは面白い。

■「急がば回れ」のときと「急がなければならない」とき(2021年7月31日)

先日、ある学生の研究で、ある程度進んだところで、一旦、止めたことがあった。そのまま突き進むよりも、少し広い視点で研究課題の全体像を把握してから、再度、進めた方がよいと判断したからだ。その際、その学生に話したことを以下に書く。

私も学生の頃、やっていたテーマについて、指導教員からストップをかけられたことがある。そのテーマには非常にやる気がでていたのだが、止められて、全く別のテーマを先生からいただいた。かなり不安になったが、その新たなテーマをやったことが、その数年後に、私の博士論文の土台となったのである。しかも、修士・博士論文で得たスキルと、止められたテーマで学んだことと考えたことが土台となって、20年後に「大幅断熱+低騒音型高圧縮比による排熱低減」の新エンジンにつながったのだった。何故、このことを学生に話したか、というと、その学生のヤル気と成果を更にだすためである。「先生に言われたからあきらめる」のではなく、「先生にいわれたら延期する」位の感覚でいるとよいのではないか、と思う。

なお、学生や若い人にやる気がある場合、止めないほうがよいことが多いと思っている。なので、若い人は、先生の言うことを必ず受け入れた方が良い、と断言はできない。先生とよく議論すべきである。

■二人乗りのBEVは増えるか?(2021年8月1日)

現時点で商品力のあるHEV(技術)を持つ自動車会社は、「15年程のちに本当に、エンジン一切なし」と決まったならば、それまでの15年間に、HEVとエンジン車で今まで以上の利益を確保しやすくなるかもしれない。消費者が駆け込みで殺到する可能性があるからだ。つまり、15年以上先のことよりもまず、この次の15年間に、今まで以上に売れる車を出すことに集中し、それからその利益を、その先にどのように投資するかを明確化することが重要になる。この駆け込みが起きると、その後(2035年以降)しばらく、車、特にBEVは売れにくくなって頭打ちになる可能性があるからだ。

EVの将来像を考える際、その土台として、新コロナウイルスで、ライフスタイルが大きく変わる可能性があることを、まず意識すべきだろうし、自動車会社は今、必死にその先読みをしてるだろう。

私も含めて、買い物もネットが増えてきている。都心から自然区域に移住して、ネットでの仕事を増やす若ものもいる。それは、二人乗りの車の増加につながるのかもしれない。都会のような公共交通網はないからだ。大人2人+チャイルドシートの小さな車は30代前半までの若い層の関心を集めるかもしれない。4人乗りよりも小さいので低価格だからだ。逆に、都心から離れると、ネットで買えない荷物が増えて小さな車ではやはり無理があるかもしれない。屋根の上に載せるのか?荷物は宅配に任せるようになるのか?このような2.5人乗りのBEVを考えると、自然区域の居住者なら、長距離ドライブは少ないかもしれないので、走行距離問題は小さいか。5-10年後の下取り価格が気になるが、車が小さいなら電池もちいさくて、交換費用も少なめか? 仮にそうだとしても、(BEVで本当にCO2が減るのであれば、)この層には、公的な補助金がないと、多くは売れないのではないか。

30歳代半ばを過ぎて、エネルギッシュで長距離運転が増え、家族4人になって乗り換えるなら、PHEVかHEVか。50歳代になると、価格が高いBEVを買いやすくなるのか。

各種の工場や発電所等での水素利用が増え、更に、航空機が水素を燃料とする方向に向かうのであれば、水素エンジンの供給場所も増えるはずである。不確定さがまだまだあるBEVとFCVを増やそうとするのであれば、それらと同等かそれ以上の「車からのCO2低減」ができる可能性の高い水素エンジンにも、同じレベルで注力すべきであろう。

30年程前、高度成長期には、二人乗りのクーペがそこそこ増えた時期があったが、その後、バブル崩壊等の不景気・恐慌の影響があったせいか、家族4人から7人での移動を重視したワンボックス車が増加した時期もある。その後、家族や仲間で快適な移動ができるSUVが増えてきた。昨今のウイルスの影響の先読みは難しく、当面やはり、様々な可能性が試される「カンブリア紀」になるように思える。

■韓国の先生の訃報(2021年8月7日)

私も、研究を通して、いろいろな国を訪れ、国際学会の運営にも関わり、海外の友人がいる。数日前、ある学会の運営委員会メンバーの韓国の現役の先生が急逝された。数か月前のネット会議でもお元気な姿を見ていたので、しばらく、事実を実感できなかった。

5年前、朝鮮半島の状況が変化した頃、私の研究室の学生3名と一緒に韓国で開催されたこの学会の講演会に参加した。「(朝鮮半島が不安定で来朝者が減っている時期に)内藤の研究室からは4名も参加してくれた。やっぱり、早稲田はすごいすごい。韓国人は昔から早稲田をよく知っている。」と言いながら、きつく抱擁してくれて、何度も何度も、盃を交わした。「50年以上前から早稲田大学は、国と国の間の高い垣根を超えて韓国や中国と学生交流を積極的になしてきたこと」を、二人で再確認した時間だった。その時のことを思い出し、抑えきれない思慕の情がこみあげてきた。

以前も書いたが、50年以上前、日本の国立大学は文字通り、日本の国のための大学で、海外の優秀な学生でも受け入れなかったそうである。その頃、早稲田は、率先して中国や韓国の学生を受け入れた。その学生達は卒業後、母国に戻って母国を牽引しながら、早稲田のことを広めてくれてきたのである。私は「学生達がどんどん海外に行って発表し、海外の街をみて、海外の人達と話すことも重要な教育」と考えてきたのだが、それは、早稲田大学の先輩の先生方が残された風土がそうさせたのだ。朝鮮の状況が不安定なので、いくかどうかの判断は3名の学生各自にまかせたのだが、彼らを行く気持ちにさせたのも、早稲田の風土の中で成長した学生の心意気だったのだ。そのことを、抱擁という肌のふれ合いを通して教えてくださった数少ない先生だった。早稲田のルーツ、私のルーツを教えてくれた先生だった。今後の日韓関係をまちがいなく強くしてくださる先生だった。早稲田と私の今後のあるべき姿を教えてくださった先生だった。感謝。コマウォ。

■スカイラインに乗り続ける理由(2021年8月9日)

過給器のある直列6気筒2000㏄(RB20DET、215馬力)エンジンをのせたR32-typeMに10年以上乗った後、自然吸気V型6気筒3500㏄エンジン(VQ35DE、280馬力)エンジンを載せたCPV35 に乗ってきた。いずれも、それぞれの時代のGTRのベース車両と思える車であるが、私はレースが好きな訳ではない。その車に私が乗ってきた具体的な理由の一つを書く。

箱根、富士山、磐梯・吾妻連峰等には、「〇〇スカイライン」という名のついた有料道路がある。そこでは、空と自然がまじかに見え、下界を見ろすことができ、窓を開けて走ると新鮮な空気が入ってくる。なので、ここを、力のあるエンジンとしっかりとした足回りの車でゆっくり、ゆったりと走っていると、全てを忘れることができ、リフレッシュできる。自然からエネルギーをもらうだけでなく、自分の好きな時に、旅客機で空を飛んでいる時のような風景を眺め、爽快な気持ちを得ることもできるのである。それが、300万円程度以下で買えたのだからたまらない。(R32typeMは新車で250万円程度、CPV35は中古で100万円以下だった。)プライベートジェットの値段がいくらか考えてみて欲しい。そして、そこの宿に泊まって、疲れが取れると、また、その翌週の仕事に向かうエネルギーが充電され、新たなアイデアも生まれやすくなるのだ。

R32の座席に座った時は、航空機のコックピットに乗った気持ちにもさせてくれた。R32のインパネのメータは全て、始動前、全ての針が水平な位置から始まるように設計されている。これは、航空機に乗って離陸した直後に見る「水平線」を連想させる。直6エンジンは「クーン」という音を出すので、航空機のエンジン音に近い。マルチリンクサスペンションとHICASと呼ばれる4輪操舵システムで、カーブをさらりと駆け抜けていく。運転座席のシートは体をしっかりホールドするだけでなく、カーブに合わせて体の向きを変更させやすく、前輪の舵角に合わせやすいものだった。ステアリングハンドルは、タイヤのアルミホイールに近い形になっているので、車内にいながら車の外観を感じることができる。

CPV35では、車の前後方向に長い直6エンジンをやめて、短いV6エンジンになったため、車の回頭性がすこぶる向上した。山道のハイウェイ(スカイライン)を走る際、あちらこちらにカーブがあるのだが、そこの走破性がすばらしく、自然の中を走った際に心休まるのである。エンジンが短くなって車体の中央部だけになるようにしたフロントミッドシップという考え方で設計されていたと思う。速く走るのではない。路面をしっかりとつかんで走ることができるので安定感があり、安心して自然をじっくりと味わうことができる。ゆっくりとゆったりと走って、長時間、新鮮な空気を体に取り込み、緑の隙間からはいるこもれびを存分に感じたくなるのだ。急な上り坂のカーブを抜けるときも、ちょっとアクセルを踏むだけで、姿勢を維持したまま、駆けていく。フロントミッドシップの車重バランスと車輪の配置の良さが、車両全体の美しいデザインを生み、「走行時に躍動感を生む」デザインであるようにも思う。ドイツ人の恩師が日本に来た際、他人のCPV35がガレージから出てステアリングをゆっくり切って道路にでる場面に出くわしたが、恩師の目が釘付けになり、私に車名を聞いてきたことを思い出す。この車は静止時よりも、運動中に存在感を持つようにデザインされているように思うのだ。なお、この車のステアリングハンドルは、この車のリアデザインと同じ形にしている。運転しながら、ジェットエンジンの排気穴に似せた丸形4灯ランプがリアに配置されていることを感じられるデザインなのだ。

なので、スカイラインを運転していると、「地上の航空機」で「地上」と「空」の境目を滑走・滑空している気持ちになる。実際、「Skyline」を英語の辞書でひくと「稜線、地平線」だ。スカイラインは「家族4人以上を乗せ、ゆったりと自然を満喫できる地上の航空機」という明確な意図を持った車なのだと私は思う。実際、この車のエンジンを開発してきた中心人物の中には、航空工学を専攻した人がいる。

6月12日の新聞に、スカイラインの開発が止まる、という記事があったが、その直後に、日産が正式に、やめない、という声明を出した。そうあって欲しいと願っている。

先日あった学生が、「R32は、今でも人気のある車だからではないか」と言っていたが、「何故、今でも人気があるのか」を考えるべきなのである。これは車に限らない。

■地球を冷やす?(2021年8月10日)

この数年、風の音が大きくなっている日が増えた印象がある。5年程前までは、こんなに風の強い日は少なかったように思う。温暖化が進んで、海や大気の持つ熱エネルギーが増えて、それが、風の運動エネルギーに変換される量も増えているのか、と思う。温暖化によって気象変動の振幅が増大し、災害が更に増えるとすると、「脱炭素」という考え方で対応できるのか?CO2を出す量はそこそこ減っても、平均気温の上昇を止められる、と断言できる人はいないだろう。風力・太陽電池の維持費用がかさんで頭打ちになった状態で、電力使用量が増えればそれを何でまかなうのか。

私も、新コロナウイルスで自宅での仕事が増え、ネット会議を増やして対応し、買い物もネットが増えた。自分が車で移動することは減り、その分、CO2排出も減ったと思う。今後、このウイルスの問題が解決したとしても、BEVが増えても、人の移動は減らすことになるかもしれない。ただし、家で、エアコンの使用量は増えるかもしれない。

私は、以前、山形に5年間住んだことがあるが、そこでは、窓はペアガラスだった。2枚のガラス板の間には断熱性の高い空間が設けられている。それ以外の壁には全面、断熱材を入れている。これらで冷暖房装置の稼働時間をかなり減らすことができたと感じた。今後は、関東地方でも、ペアガラス等による断熱化が進むだろう。

エネルギー消費量そのものを減らさないと、明確な対処にはならないのではないか、と思っている。省エネという言葉とはレベルが違う意味でだ。それが人間にできるのか?

以前も書いたが、中古車や家電製品も含め、修理して長く使うことも増えるだろう。新規商品の製造時には電気を食うからだ。水素の価格は高くても、EVの価格よりも安ければ、水素エンジンも増えるだろう。それでも十分といえるのか。

なので、私自身も放射線を出さない弱い原子核反応の研究に注力しつつあり、これが進めば、新たな一つの根本解決策になるかもしれないと、本にも書いた。

もうひとつ、ふと思うのは、「地球を冷やす」必要まででてくるか、だ。数年前、米国の航空宇宙学会に行ったとき、NASAの研究者が「地球を動かすエンジンの新原理」というような発表をしていた。地球の軌道をずらし、太陽から少し離せば、冷えるのだろうか?

■地球を冷やす案の新聞記事(2021年8月15日)

今朝の新聞に、海外の「地球を冷やす研究」が紹介されていた。気象工学、という名称だった。5日前、上記したように、海外では、このような温暖化・気象変動対策まで始まっている。脱炭素というキーワードではなく、それ以上の次元での気象変動対策の必要性は日本でも、この数日の冷夏で感じるだろう。ただし、その確実性、信頼性、現実性が見通せない。一度、実施したら、戻れない、つまり、不可逆である点が心配である。

■CO2を大気から吸い取る可能性(2021年8月20日)

燃焼を伴う各種の機械から大気に放出される直前に、CO2をなんらかの方法で吸収してしまう研究は、10年以上前からいくつか試されていている。地下に埋めてしまおう、という策もあるし、CO2を水素等と反応させて炭化水素燃料を生成する策は、最近、日本で報道が増えている。

私は、20年ほど前、温度の高いCO2を食べる微生物はいないか、調査したこともある。エンジンから排出される100℃以上のCO2であれば、大気よりも高い温度の熱エネルギーを持っているので、その温度差と微生物を使って、CO2を炭化水素にできないか、文献調査をしてみたのだ。100℃あたりで良く増殖する微生物は結構いる。好熱菌と呼ばれる一団もあるくらいだ。CO2を食する可能性のあるものもあった。ただ、CO2を食して増殖速度が高いものはあまり、いなかったように思い、その路線で更に深く調べることはやめた。

ただ、ススを食べて増えそうな好熱菌はいたので、関心を持った私の研究室の学生が頑張って確認したことはある。

CO2は、あまりおいしい食べ物ではないらしい。

なので、CO2+H2から、炭化水素燃料をつくる技術の研究に関する報道も、最近、増えてきているが、この技術の実用性についてはまだ、考えないことにしている。

■新コロナウイルス変異種による自動車部品生産能力減少と中古車(2021年8月22日)

数日前の新聞に、9月の自動車部品の生産が半分近くまで減少するようだ、という記事があた。新コロナウイルス変異種の影響で、感染者が増加しているかららしい。最近、新車の納期が遅れがちだが、半導体生産能力の限界だけでなく、これも原因の一つになりそうである。こうなってくると、ユーザーの視線が中古車にむかうのではないか。

以前も書いたが、中古車と言っても、新車に近い車が多く存在しているからだ。中古車であれば、新車製造に伴うCO2発生もない。その後、ますます、中古車のリニューアル市場を加速するかもしれない。

脱炭素、ウイルス、自動車、情報機器、等々、今まで以上に、あらゆるものが連動し、対流し始めている。全体を更に俯瞰してみないとならない。

■半導体不足による景気悪化の予測理論(2021年8月23日)

 私の研究室で10年程前に提示した経済変動予測方程式と、5年程前に提示した恐慌予知理論を見ると、画像素子を含む情報生成装置のニーズがある限界値以上に増加すると、不況になりうることが示されている。画像素子を含む半導体の生産設備能力を需要が超えてしまうことが原因と考えられることも、説明できている。

■指紋認証(2021年8月23日)

最近、自分の携帯電話の指紋認証が効かなくなったので指を見た。新コロナウイルス対策で毎日、何度も、アルコールスプレーで指先を消毒しているので、指紋が薄くなり、しかも、カサカサになって皺が入ったことが原因だ、と感じた。新コロナウイルス対策のために、マスクもしてるので、顔認証も使えない。携帯電話の開発者は、マスクをした状態でも顔認証できるように変更しつつあるだろう。でも、そうなると、目と眉毛だけで正確な認証ができるのか? 眼底の血管パターンを読み取るのか?でも、暗いところでは無理があるだろう。瞬きの回数も認証時の暗号に加えてはどうか。でも、瞬きの回数が多いと時間がかかるのでダメか。新たな認識方法が必要時期に来ている。

■HomePageの各所に紫色で追記(2021年8月29日)

半年程前に、このHomePageを大幅にリニューアルした。理由の一つは、新コロナウイルスで、3年生以下の学生に教室で会う機会が減り、それを補完するためだった。もう一つは、「気象変動対策」で、先が読みにくい時代になってきているので、私の考えを伝えるためである。

私が以前、推測・予知し、半年前に記した「水素エンジンの実用化が加速」は、その数か月後、実際、T社さんの水素エンジンレース参戦として現れ、報道された。

私の研究室で10年程前に提示した経済変動予測方程式と、5年程前に提示した恐慌予知理論を見ると、画像素子を含む情報生成装置のニーズがある限界値以上になると、不況になりうることが示されており、それは、最近の自動車減産として現れている。

3年程前の米国航空宇宙学会における「地球を動かすエンジン」の発表を聞いて「それで地球を冷やすことまで必要か」と書いたが、その後、地球を冷やす気象工学が新聞で報道された。

なので今後も、書かなければならない。考えを伝えるためだけではなく、書きだして整理することによって、私の頭にゆとり空間が生まれ、その先を見通す可能性が高まるからだ。なので私の研究室のHomePageの、Top、Research、Professorの中の「アイデアを出すための6つの基本事項」にも、紫色でかなり追記した。

■ 線形外挿理論で将来予測ができるのか(2021年8月29日)

30年程前、スーパーコンピュータの演算速度の過去のデータから線形外挿して、将来の演算速度の予測をし、エンジンの燃焼安定度解析が可能になる時期を割り出した。今年2月26日には「BEVが普及する時期を予測する線形外挿理論」も記した。

線形で予測できるのか?もちろん、扱う現象による。問題は、対象としている技術の進歩が、予測よりも急激な上昇カーブを描くか、だ。その上昇カーブを実現するのに必要な事は、人類の脳の進歩(大進化)だろう。そのために、生身の脳が進化する必要はない。昨今の情報技術を人間の脳が取り入れて、今まで以上に脳に密接に接続できるかどうかを考えるのも一つの選択肢である。

それができたとして、太陽電池も含めた電池の技術が飛躍的に進歩し、温暖化・気象変動の対策がなされれば、それは素晴らしいことである。

なので私どもの研究室では、人工天才脳の研究も進めている。

■仕事と遊びの研究(2021年9月9日)

研究を、「仕事」として実施するものと、自宅等で自由に進める「遊び」のものとの2つに分けて考えみる。仕事としての研究とは、企業・大学等の所属する機関で実施するものであり、遊びで行うものは、自宅やサークルでのものと考えてみよう。

私が若い頃の「遊び」の研究では、20歳頃、まだ、卒論の前に、自宅のパソコンで、数値流体力学のシミュレーションをやったことがある。 空間1次元における非定常圧縮性流れの問題だった。 今のパソコンなら、あくびをしている間に計算が終わる問題だが、40年前のパソコンでは、計算が終わるまでに一晩かかった。 それでも、非線形問題の近似解が得られたので興奮したことを思い出す。 自宅なので、一日中、研究に没頭できた。 大学だと夜中はできないし、疲れたら、寝そべってパソコンをみることもできないので、計算の途中経過をじっくりみるのは、自宅が最適だった。 なお、自宅なので自分だけで自由にやれたが、その分、責任も自分だけにかかってくる。 計算がうまくいかない場合でも、その原因究明などは、先生には頼れない。

企業に就職した後、別のテーマの遊びの研究を行なおうとしたこともある。 好熱菌と呼ばれる単細胞生物を使ったエンジンの排気ガスの吸収実験、である。 好熱、なので、100℃くらいで、CO2やススなどを食べるか、と考えられる微生物だった。 まず、微生物の教科書を読んでいたら、その可能性が見つかったので実験してみたくなったのである。 ただ、職場でこの実験をやる許可を得るには、かなりの時間と苦労が必要だと感じた。 そこで、自宅でやれないか、と考え始めた。 装置自体は小さいからだ。 しかし、その微生物が増えて、家じゅうに拡散し、家族の健康に悪影響が出たら困る。 しかも、近所に拡散したらと考え、あきらめた。 ただ、その数年後、国立研究所大学で仕事をできるようになってから、ようやく、その実験を実施した。 なので遊び実験考えることはその後実施準備を加速したことになる。 重要ことは、遊びの実験仕事実験としてできるようにする努力とそ気持継続することだろう

■情報氾濫の中での情報限定(2021年9月9日)

私達は、インターネットによって、世界の情報をたくさん、短時間で収集できるようになった。しかし、その情報収集は「キーワード」入力で始めることが多い。なので私たちは、限定された狭い範囲の情報をたくさん集めて、下手をすると、それで満足している状態になっていないだろうか?似たような情報をたくさん得ることは、情報収集とは言えないのではないか?多様な情報を得るべきではないか。

コロナウイルス問題が出る前は、私も研究発表で、年に2回は海外に行っていた。そしてその開催地を歩いていると、今まであったことのない新鮮なものや事象に出会ったこともある。ランダムウォークに近い歩き方をしている時間が結構あると思う。学会のバンケットもそうで、ランダムに会場を歩いているうちに、知り合いの知り合いと話はじめ、重要な情報を得たこともある。

なので、インターネットで、ランダムな情報収集もすべきか?ただ、「タダ(の情報)ほど、怖いものはない」とも言われる。会ってもいない人のネットの情報はその性質がつかめないのだ。

現在のキーワード検索・チャット・ストリートビュー等では、情報収集のための「窓」として、まだまだ、不十分に感じている。ストリートビューで、そこを歩いている人に出会うことはなく、会話することもない。

バーチャル世界だけでは無理があり、やはり、現実の世界を歩く必要はなくならない。

■恩師の墓参りにいく(2021年9月23日)

先日、恩師の一人のお墓に初めて行ってきた。亡くなられてから既に13年が経過している。7回忌には、弟子であり、心の友でもある面々が100人ほど集まって、しのぶ会をした。みんなで集まって話をしていると、その横に恩師がいるように感じ、また、明日に立ち向かう勇気を、恩師からいただいた。昨年は13回忌だったのだが、ウイルス問題もあって何もできなかった。なので一年遅れだが、今年はお墓に行って13年間のご報告をしてきた。

恩師の場合もそうだが、最近、お葬式は家族だけで行われることが増えてきている。だが、命日に恩師や親を思い出すことは、残った若い私たちにとって、自分を振り返るチャンスであり、そのことによって明日に向かうエネルギーを得る大切な時間だと思っている。命日は、自分が直面する課題に対して、恩師ならどのように対処し、どのように進むのか、ということを考える時でもあるのだ。

既に他界された私の恩師は2人いる。いずれも、今でも直ぐに、その笑顔、笑い声、話したこと、手の皺、背中、等を思い出すことができる。いまでも、私の心の中に、私と一体化して生き続けているのである。

■アフリカで水素製造?(2021年9月26日)

1年近く前から繰り返して、エンジンは炭化水素利用から水素利用に、静かにじっくりと確実に移行すると書いてきた。少なくとも数十年間、自動車・航空宇宙・発電で、エンジンの利用が大幅に減ることはないだろうということも意識して記してきている。

最近の新聞等に、「アフリカで、再生エネルギーを使って水素を製造する」という記事がでていた。アフリカであれば、人件費の点で、水素の製造コストは安めにできる可能性があるのだろう。アフリカの発展にも貢献できる。当面、電池利用が増えるが、それに少し遅れて、水素燃焼エンジンによる動力・エネルギーが急増するのではないか。

アフリカで製造された水素を欧州に運搬する際のコストの問題は、数年前から、水素を運搬する大型船がつくられており、オーストラリアと日本の間で利用されるであろうことをみれば、現実的な解があると思えるからだ。

大幅な断熱+低騒音型高圧縮による排熱低減、や、放射線を出さない弱い核反応が実現すれば、燃料は炭化水素から水素に徐々に変わっても、エンジンは以前として世界の背骨だと思うのだ。

■正確な認識と正確な表現の必要性(2021年10月30日)

最近、100万円以下の自動車の販売加速の話が増えてきているが、ふと、気が付いたことがあるので記しておく。最近の100万円以下のBEVの多くは二人乗りで、三輪のものもある。なので、これらは、オートバイ、のジャンルに属すると考えた方がよいかもしれない、と思ったのである。10年くらい前から屋根付きのバイクも増え、原付バイクは短距離の移動に使うことが多いからだ。2人乗りで一回充電100㎞程度走行可能な50万円の屋根付き三輪電気自動車と、車輪ひとつ減らした電動バイク、のどちらを選ぶ人が多いかだ。二輪の方が最高速度も高いのではないか。

ここ数年、エンジンのない「電気自動車」(BEV)と、エンジン+電池のハイブリッドシステムの「電動車」(HEV)の用語の定義の差異があいまいなことが多かったので困ってきた。熱効率と燃焼効率という言葉を混同する人も増えているようだ。それ以外の用語も注意して考えないとならない、とあらためて思う昨今である。

続く