自動車+航空宇宙分野を包含する世界最大規模の国際学会(SAE)における2つの研究発表報告(2023年3月14日-16日フォートワース&4月18日-20日デトロイト)と5月24日の自動車技術会春季大会(横浜)における研究発表

私どもの研究室で提案して進めてきた「多数の気体噴流群を燃焼室中央で衝突圧縮させる新原理」に基づく超高効率エンジン(Fugine: Future ultimate focusing engine)は大別すると2種類ある。一つはピストンを併用した自動車・発電用で、もう一つはピストンレスの航空宇宙・ガスタービン発電用である。炭化水素燃料だけでなく、水素等の低炭素燃料にも適していて、燃料を選ばない。

大幅な断熱+低騒音型高圧縮比を可能とするもので、この2つの試作エンジンで、燃焼安定性が実用レベルに到達し、しかも、熱効率が55%を超えることを示唆する実験結果が得られ始めたことを発表した。実用化・事業化段階に進みつつある

ピストン有の地上用:

https://www.sae.org/publications/technical-papers/content/2023-01-0401/

ピストン無しの航空宇宙・発電用:

https://saemobilus.sae.org/content/2023-01-0984

5月24日、日本(自動車技術会春季大会:パシフィコ横浜、AM9時からのセッション)において、上記2つのSAEpaperの要点をまとめて説明するとともに、更に重要な内容をお話した。(以下、題名と要点)

パルス噴流群衝突圧縮原理に基づく大幅断熱・低騒音型超高圧縮比エンジンリアクタ(Fugine)の見通しと短中長期計画案

Three-stage scenarios based on relatively-silent pulsed focusing engines with nearly-complete insulation effect (Fugine) and Engine-verseology

昨今、世界で多様化している自動車用動力機構(HEV、PHEVBEV、FCV、水素エンジン、efuel等)の状況を俯瞰し、評価したうえで、今後のパワーソースに関する私の先読みをお話した。我々が過去に経験した類似の歴史的事実や、新たな独自理論に基づいたものである。その上で、FugineとFusine (Fusion engine)を中心にした短中長期計画を述べた。自動車・発電・航空宇宙の全体についてである。

■英国Research Features誌に掲載された紹介記事(2023年3月23日)

英国のResearch Featuresは「10,000人を超える人達が読む科学誌」と言われている。昨年末、この科学誌の編集メンバーが私どもの研究に強い関心を持ち、「全世界に向けて紹介したい」という連絡が届いた。一昨日公開された、私どもの研究の紹介記事は、

How particle breakups could connect phenomena (researchfeatures.com)

である。(25年程前に公開した論文(Ken Naitoh, 1999, 2001)を土台にしたもので、その後の成果の要点が記されている。)

日本シミュレーション学会の国際講演会で、Student Presentation Award受賞(2022年11月、佐藤理久):管内乱流遷移現象の数値解析 (Computation of laminar-turbulent flow transitions in a circular pipe with a bellmouth inlet)

翼や平板周りの乱流遷移現象は、理論・数値解析によってかなり解明されてきているが、管内の乱流遷移現象は100年の謎とされてきた。その解明の一里塚となる成果である。特に、管上流入口の乱れの程度と乱流遷移するまでの時間・距離の関係を解明できる可能性を示したことは特筆すべきことであり、航空用エンジンの燃焼安定度向上や生体内血流の解析等にも寄与しうるものである。

Award: 日本シミュレーション学会 Best Paper Award 受賞のご報告(2020:小林 知嵩、内藤健)

小林 知嵩(修士課程2年)がシミュレーション学会英文論文誌(JASSE)に投稿した論文 “New quasi-stable ratios of particles in nature revealed by multi-dimensional Taylor approximation” (小林、内藤著)が「日本シミュレーション学会 Best Paper Award」を受賞しました。この論文は、量子流体物理学というジャンルのもので、小さな素粒子から生命細胞に至る様々な粒子の分裂現象の解明に関するものです。

究極系研究-ナノからテラスケールに跨がる6つの挑戦(2015)

「究極系研究-ナノからテラスケールにまたがる6つの挑戦」統計熱流体力学を基軸とし、独自の極限的エンジンを開発し、宇宙の本格的利用を促進するとともに、太陽系外に行って「生命とは何か?」という問の答えを見つけたい。二十歳の頃、井深大さんの足跡を知り、「若いうちに、人生をかけるテーマを見つけたい」と思ったことがある。辛い課題だったが、仲間や先輩と飲みながら議論するうちに、当面の基本方針が頭に浮かんだ。「一見、複雑怪奇に見える生命の70%(主成分)は水であり、その流れの中に命は宿るのだから、学生時代は、まず、熱流体力学を極めてみよう」、ということと、「エンジンも生命の心臓も脈動するポンプであるので、日産のエンジン研究開発に貢献できたら、生命研究にも入ろう」ということだった。一言で言えば、熱流体力学を基軸とした「エンジンと生命の融合研究」である。日産では、乱流燃焼の数値解析方法を考案し、それを用いてエンジン性能改善案を提示した。そして、直噴ガソリンエンジン性能を向上させる技術で商品化に寄与した頃、不思議な縁が重なって生命研究に入っていった。その後、西暦2000年という節目に山形大学に移ったが、そこで目にした樹齢1000年の夜桜は、私の人生観を根本から変えた。「1000年後も生き続ける新科学、1000年の時間に耐えうる技術」を考えるようになったのである。めまぐるしく変化する東京では、「現世を忘れぬ」ことしか考えられなかったが、山形で、「久遠の理想」を考えさせられたのだった。山形の大樹が「こころがまえ」をくれたのである。企業が直ぐに欲しがる技術だけではなく、次代の科学技術を生み出さなければならないと考えている。具体的には、エンジンと生命が枝分かれして、以下の6つの課題になっている。

(1)究極熱効率エンジン:熱効率60%以上で、マッハ数ゼロ(地上の道路や発電)からマッハ数15以上(航空宇宙)で作動する単一軽量エンジン(Fugine)の特許群出願とその実機開発[J of Thermal Science 2010, SAEpaper 2014, AIAApaper 2013, 2014等]

(2)究極エンジンシミュレータ:乱流遷移を含む各種遷移現象の統計流体力学・数値解析方法考案と、それに基づく本格的数値風洞・バーチャルエンジンの構築[JJIAM 2011, JSME Int. J. 2013等]

(3)始原菌を用いた燃料生成研究(4)万能基礎医学と人工天才脳の研究[Artificial Life Robotics, 2008, 2010, 2013等]

(5)核子・生命分子・恒星の諸分裂過程を統合的に説明する粒子理論の提示[日経サイエンス、2005, J. of Physics 2012, 2014 等]

(6)経済変動現象解明とその制御方法の提示[JJIAM, 2011]

である。山形大学にいた間、学生とプレベンチャー企業を立ち上げたが、今、五十歳を目前にし、その再立ち上げすべき時期かもしれないとも考えている。

ここまで書いたところで、東北関東大震災に遭遇した。私は東北の方々に大変お世話になったので、やるせない思いで張り裂けそうになる。このタイプの大規模地震は過去に1000年周期で発生していたらしい。一年を刻む「長針」と、千年の「短針」両方を見ながら、「6つの1000年技術への挑戦」を進めなければならないという思いは膨らむばかりである。(20155月一部改変)

世界最高のサイボーグと地上の航空機(2006)

「世界最高のサイボーグ」と「地上の航空機」

 人と一体化した自動車は「世界最高のサイボーグ」と考えてきた.300馬力エンジンで時速200kmを悠々と維持できる車は「地上の航空機」とも言えるだろう.航空宇宙研究の最終目標は生命探査、ではないだろうか.物理数学と企業経験を基軸においてエンジン・航空宇宙・生命分野を一体化し、若人と共に新しい科学・技術の「芽」を生み出したい.