つぶやき・ささやき(2022年8月11日から)

■HPのResearchの追記修正(2022年8月11日)

素粒子のエンジン、バーチャルエンジン、生命のエンジン、人工天才脳、極限的微生物利用研究の部分に緑色で追記しました。

■ダンボの耳と鷹の眼(2022年8月13日)

先日、「聞き耳を立てる」ことを記したが、今日は、Carl Twiss社の「鷹の眼」と呼ばれる銘レンズ(Tessar)のことを書く。「がその高解像度の眼で獲物を探し、見つけた獲物を刺すような視線で外さず、集中して狙ったまま、一気に捕獲する」ように、「このレンズで素晴らしい一瞬をとらえよう」という思いが込められているのだろう。

私達が様々な仕事をするときも、この鷹の様な構えであると良いと思っている。

以前、HPの人生を完全燃焼させる方法で「上杉謙信が、武田信玄の海津城から出る煙の量の変化をにらみ続けた」と記したが、これも鷹の眼のような話だ。「海津城からあがる炊飯の煙が増えた夕方の翌朝、二倍の兵力を持つ信玄が二手に分かれて攻めてくる」(キツツキの戦法)と謙信は予測した。なので、謙信は夜のうちに妻女山から川中島に降りて準備を整えて待ち、早朝、川中島に到着したばかりの信玄ただ一人を目指して突進し、不意打ちしたそうだ。これも鷹の様な行動である。キツツキの信玄にタカの謙信が勝ったのである。こんな上杉謙信の魅力に惹かれたのか、信玄が亡くなった後に上杉と共に米沢に移住した武田家の子孫と米沢で出会ったこともある。真摯な生きざまは、新たな人との繋がりも生み出す。

弱小大名だった織田信長が、徹底的に情報収集したうえで、大大名だった今川義元ただ一人を桶狭間でねらったことも同じような話である。現代風に言えば、ベンチャー企業だった信長が、大企業だった義元に勝ったのである。

現在の大企業が、50年前、どの程度の規模だったか、調べてみるのもよいだろう。初めから大企業だった会社は一つもないはずである。自動車やカメラの会社あたりを調べれば十分だろう。たくさんあったベンチャー企業の中から、いくつかだけが大企業に成長した。その成否を分けたのは何だったのか、を調べて考えてみるのもよい。

研究も、狙い目(目標)の定め方とそれへの集中力が大切だと思う。

私は、カメラによる写真撮影が好きなので、レンズキャップの様に軽いTessarレンズ(焦点距離35㎜、f3.5、直径43㎜、長さ9㎜)をつけたAPSのデジカメを持ち歩くことが多い。ふと、美しい風景や思白い形のものに出会うことがあり、それを逃さず、撮影するようにしている。これも、研究のネタを探す「鷹の眼」を養う訓練になっているのかもしれない。もちろん、人や他人の所有物を撮影するときは、注意が必要だ。今年の5月には、素晴らしい白薔薇が咲き乱れる家に出会った。その家の人に話しかけて撮影許可を得たのだが、同時に、その家の人の薔薇への熱い思いが素晴らしい花を咲かせていることも知った。こんな出会いをも少し期待しながら、写真を撮っているのかもしれない。

この時期、サルスベリの花があちらこちらで咲いているが、紫色のものは、眩しい夏の空にあう。

■自動車用と航空用エンジンの大きな差異(2022年8月15日)

自動車用の動力源として、電池とガソリンエンジンのパラレル型ハイブリッドが増えた理由は、自動車が街中で、アイドリングを含めた加減速を頻繁に繰り返すことにある。地上ではアイドリングから毎時20㎞くらいまでの低速走行が多く、その際の燃費(熱効率)がかなり低いためである。なので、低速時はブレーキング時にためた電力だけで走行し、高速走行(アクセルを開いて高回転状態)では相対的に熱効率が高いのでエンジンで走行する。シリーズ式ハイブリッドも増えつつあるが、これは、常にこの熱効率が高い状態で発電できるからである。なので最近は、「アクセルを開いて高回転状態での熱効率向上」の研究開発が重要になっている。

一方、航空機では上空に信号はないのでブレーキをかける必要はなく、離陸と着陸時のごく短い時間以外は高速・高出力でほぼ一定速度で飛行している。国内線では2時間程度、国際線で言えば最大10時間程度が高速一定速度飛行である。なので、この点で、ジェットエンジンと電池のハイブリッドの意義は、自動車よりも薄いと言えるだろう。ブレーキでのエネルギー回収がないからでもある。なので、航空用でもやはり、やるべき重要事項は高速でのエンジンの熱効率向上だと考えている。航空用エンジンがハイブリッド化するメリットとして私が思うのは、エンジンが失速・失火して再始動できない場合の緊急動力源くらいである。完全電動化する可能性があるのは、短距離のヘリコプター的なニーズに限定されると考えているが、高価格・重量・充電時間の問題だけでなく、救助用等を考えれば飛行時間が短いことがネックだろう。

大型ドローンで短距離移動を増やすよりも、まず、電車内の空調環境の更なる改善でウイルス感染を根絶することも考えてみるべきではないだろうか。ウイルスの感染力がこれ以上上がれば、通勤用電車では長椅子がピアノの鍵盤のように区切られ、薄い縦板が人の左右に設置されるようになるのかもしれない。つり革とつり革の間には、天井からビニールシートが降ろされて設置されるのかもしれない。人間が、その他の動物と共存しながら増えてきたように、新コロナウイルスも、更に増えるために殺傷力の強化は選ばす、感染力の方を上げる方向に進化しているようだからである。

小型軽量で大出力の電池の実用化を含め、大型ドローンの開発にはまだまだ年月がかかる。この数年にやらなければならないことがいくつもあると思うのだ。

大学でエンジンや熱流体工学の基礎をしっかり学ぶことは、次代の方向性を見失わないためにも重要である。

■いのちます(命増)(2022年8月15日)

また、新コロナウイルス感染が増えているので、このお盆は自宅の片付けをして、居心地の良い空間つくりすること、を目標のひとつとした。なので、過去の書類の山を整理していたら、20年程前、山形大学に赴任した直後に書いた原稿(大学のOB会誌?に寄稿した文書)が出てきた。

題名は「いのちます(命増)」である。その要点を以下に記すことにする。

「1990年頃、ドイツのアーヘンに滞在したことがある。郊外を一日かけてドイツの仲間とハイキングしたのだが、常緑樹ばかりで新緑のかおりがせず、すがすがしさを感じなかった。新緑がないのでは、美しい紅葉も少ないだろうと感じた。・・・それ以来、日本をもっと知りたいという思いが強くなっていった。

米沢に来てから、ほぼ4か月が経過した。4月末には樹齢1200年と言われる長井市の久保桜を見たが、予想以上に花をつけていたので驚いた。神奈川の最長寿は330歳であることを考えると、自然の豊かさも思い知らされた。5月にはいると燃え上るような(萌えあがるような)新緑に包まれ始めた吾妻山が見えた。残雪の白さをそのまま運んできたような長井の白つつじもみごとだった。・・・7月に入ってからは、紫陽花が美しい。・・・・毎月、一つづつ、壮大な自然のドラマをみている。住んでみなければわからない贅沢である。・・・・この自然が、将来の日本と世界をリードしてくれる人材を生み出すことを確信している。・・・・

米沢のことを書き始めると終わりがないが、童門冬二が書いた上杉鷹山と直江兼続の小説は味わい深い。鷹山の本を読んだ後、今の米沢を歩いていると、「米沢は世界で初めて民主主義を実現したところである」ことを実感する。・・・では何故、明治維新後も米沢の人口は変わらず、そのままなのか?直江兼続は石田三成と組んで負けたが、何故、上杉の米沢藩はつぶされなかったのか。これらの疑問は、民主化が決まった山形大学の中で、私がどのように研究・教育を進めていくのかを考えるための出発点の一つとして私の中にある。

米沢はやまやまに囲まれた「谷」である。しかし、現代の「谷」は、情報から隔離された僻地ではない。アメリカのシリコン「バレー」を見ればわかる。この米沢に今、鷹山がおられたら、その最高戦略に何を掲げるだろうか。

信長、家康は、苦しみながら「平和」を追い求めた。そして平和になると、鷹山は「平等」を求めた。私達は「命増(いのちます)」を求める時代にいる、と鷹山はいわれるのではないか。・・・・・全ての生命を活性化する方向に導いていく、という「いのちます(命増)」という二文字を行動の基準にすると私は決めた。微力ではあるが努力していこうと考えている。

今泉の和久井仁泉先生のつくられた「あじさい」と呼ばれる夏の煎茶椀でのどをうるおし、1200年の歴史ある小野川温泉の「滝湯」につかり、インターネットで世界とやりとりしながら、こんなことを考えている毎日である。」

素粒子のエンジン(燃焼反応を大幅に超えるパワーの動力機構)が進めば、それは人間の生存領域を宇宙に広げることとなり、生命のエンジン(大病の事前予知とその対策方法)は、寿命がくるまで健康でいることを可能にするかもしれない。これらはいずれも、生命を更に活性化するだろう。

時折、部屋を整理するのも意味がある。自分の軸を再確認し、前に進む力を再び得ることもあるからだ。初心に帰る、である。

■「アイデアを出すための6つの基本的事項+人生を完全燃焼する方法」の実践策(2022年8月18日)

HPのProfessorに、アイデアを出すための6つの基本的事項と人生を完全燃焼する方法を記した。ただ、それでも誰か、「具体的なアイデアや創造的な案が出てこない」とつぶやきそうである。なので、実践までいくことを手助けするために、更に2点追記してみる。私の若い頃の具体的な事例、経験談である。

・若い頃(高校生と大学1,2年あたり)、自分自身で努力して効果があったのは、先生から講義を聞く前に自分で教科書や本等をある程度読んで予習したことである。自分で考えないと理解できないので、読む力と考える習慣が養われたのではないか、と考えている。ただし、多くの科目で予習をする時間は取れず、高校では数学と物理のみ、大学では流体力学のみである。定期試験のための復習等に多くの時間をとられたからである。得た知識の複数がつながって「知恵の卵」のようなことが頭に浮かぶことは時々あった。ただし、それらは、おそらく、世界中の誰かが既に気が付いているだろうと思うものばかりだった。HPの冒頭から何度も書いているように、若い時から独創的なアイデアがでるようになった訳ではない。私自身、若い頃(大学を出た頃でも)、そこそこ意味がありそうな独自のアイデアが浮かぶことは年に一度程度だった。大切なことは、あきらめないことである。大学を卒業後、授業はなく、常に自分で学ぶ「予習」だけになるからである。

・なので、挑戦的・独創的な仕事をしてきた先輩・恩師の生きざまも、何年もの間、近くでよく聞いて、目を見開いて見てきた。先生方が若い頃にどのようなことを考え、どんな本を読んで学び、どんな風にアイデアに行きついたのか、を「ダンボの耳と鷹の眼」で探った。私の学部・修士時代の恩師は研究に対する集中力と粘り強さを感じさせる人で、その情熱が、本には書かかれていない独特な知恵を学んだように感じた。なお、車とLEICAを楽しむ人でもあった。研究室の本棚に並んだ本の背表紙を丁寧にみたら、分厚いLaudauの流体力学の洋書が一冊、研究室に置いてあった。なんとなく惹かれる思いがしたので、日本語版を購入して半分程度読んだのだが、深みと幅があり引き込まれた。それらが、その後の私の研究のアイデアにつながっている。逆に、就職後に受託研究員としてお世話になった恩師から得たのは、「難しい本をたくさん読めばよいわけではない」ことだった。「大学1年時に習ったテイラー展開を使った単純な式で、円柱周りの乱流現象(Reynolds数がある限界値を超えると、抵抗係数が急に激減する現象)を世界で初めて解けた」という話を聞いたからである。この恩師からは、「研究に向かうだけでなく、音楽演奏や飲食を楽しむことも重要だ」とおそわった。また、国際講演会における招待講演(Invited Talk, Keynote Lecture等)の聞き方も得た。招待講演者の最先端の話題は誰でも関心を持つ。しかし、中には、過去の数十年の多くの人の研究を総括し、まとめたような講義に近いものもあり、聞き流しがちだ。ところが、「総括講義的な講演を聞いていると、基礎学力が整理され、それが、自分の経験や知識とつながると、新たなアイデアが出ることがある」と、講演会会場を出るときに呟かれていた。

二人の恩師の生きざまをみていると、熱力学に出てくるカルノーサイクルのように、高温(研究に熱中する時間)と低温(心を穏やかにする時間)を繰り返していたようである。人生を完全燃焼させるには、この繰り返しが必要だとも感じた。

「カルノーサイクルの熱効率ηの式(η=1-TL/TH)は、THがより高い温度で、TLがより低い温度だと、より高効率・高出力になることを示している」のだが、これは「二人の恩師の生き方が生み出した成果の大きさ」をも説明しているとも感じた。より研究に集中すること(極高温化)と、研究から離れて別の心地よい時間にどっぷりつかること(極低温化)の繰り返しをされていたからである。つまり、熱力学第一法則から導出されるエンジンの熱効率の式は、「人生を完全燃焼させるための第一法則」だとも感じたのである。

なので、様々な知識を聞き、読んで、記憶した後、しばらく時間が経過してから、それらが結びつくことが新たな独自性のあるアイデアのきっかけになることが結構あるように思う。もちろん、記憶しても、かなりの部分は忘れてしまうのだが、印象的な事項は以外と覚えていたからである。では「しばらく時間が経過」とはどのくらいの時間か。もちろん、講義・講演を聞いたり、本・論文を読んだ直後ということもあるが、何か月後、何年後にふと思い出して知識が結びついて独自のアイデアにいきつくこともかなりある。高温と低温を何度も繰り返した後、である。

■人生を完全燃焼するための第二法則(2022年8月19日)

上記の「人生を完全燃焼させるための第一法則」は、10年くらい前から学生達に話してきたことである。「人生を完全燃焼するための第二法則」は、5年程前の卒業式で話したので以下に記す。熱力学の第二法則が示す重要事項のひとつは、運動エネルギーは粘性・摩擦力によって一方的(非可逆的)に減少し、温度上昇(内部エネルギーの増加)に変わることである。これは言い換えると、全てが静止する状態に近づいていく特性である。生命で言えば寿命があることだ。なので「人生を完全燃焼するための第二法則」は、「第一法則で仕事の成果が出たら、次世代(後輩)を育てることを徐々に進めていこう」ということである。(注:運動エネルギーが一方的に減少するのは、外部からのエネルギー供給がない場合である。なので、食事をとれる間は生きられるが、取れなくなるにつれて、摩擦ロスで失う運動エネルギーを補充できなくなるので、寿命にちかづくことになる。)

■VISIONセンターでの話題提供(2022年8月29日)

数日前、日比谷公園の近くにあるVISIONセンターを訪れ、次代のエンジンと素粒子のエンジンについて話題提供してきた。研究室紹介の依頼があったからである。訪れた大きなビルの入口には「今治造船株式会社」の看板があったが、今は貸しビルとなってるようだった。現在はそのビルの一部がVISIONセンターになっている。

「今から60年以上前、日本をけん引する産業は造船と繊維だったこと」をよく、学生達に話してきたが、実際に、この重厚なビルを目の当たりにしたとき、そのことを強く実感した。そして、この60年の間に相対的に造船産業は小さくなり、次代の新たな産業のVISIONを議論する場、になったのだと私はとらえた。

講演の後、その隣のショッピングモールのビルに入ると、LEXUSの看板を掲げた広い喫茶店があった。その店にはLEXUSの高級車が数台、展示されているが、そこで車の販売はされていないらしい。自動車産業がこの60年間に、とてつもない成長を遂げたことも実感した。60年以上前、自動車会社は小さなベンチャー企業でしかなかったからである。

この日の帰り道、私は、今から60年後に花開いている大きな産業は何か、ということを考え、エネルギー関連が必要だという思いをあらたにした。日本にはエネルギー資源が少ないからである。

■富山大学での話題提供(2022年9月12日)

2022年9月12日14時から、日本機械学会2022年度年次大会(会場:富山大学)において、ワークショップ「 100年に1度の変革期にある内燃機関のブレークスルー技術 (W071-03)」が開催された。講演依頼がきたので、

「多重衝突パルス噴流圧縮エンジン:-革新を超えた独創を目指してー」

と題して話題提供した。「低騒音型高圧縮比+大幅断熱による高熱効率燃焼エンジン」と「素粒子のエンジン」の理論・シミュレーション・実験結果とVISIONである。数年前に出版した本(最新・未来のエンジン)と、この数年間の論文・発表の内容を整理してその要点を話したが、未公開知見や見通しも若干、加えた。(このHPの「最新情報」欄に、そのAbstractの最終版をUP。)

自動車会社が「水素エンジン開発」について熱意を持って講演しており、有意義な議論ができ、新たなアイデアも思い付いた。人生を完全燃焼する方法にも記したが、時々、他者と議論することによって、更に新たなアイデアが浮かんでくることがある。

なお、2013年には日本経済新聞等、2016年にはNHK、が、このエンジンの可能性について取り上げてくださり、結果としてそれは「のろしをあげた」ことになった。昨年あたりから、一つ目の主戦場に入って(ヤマ場をむかえて)いるのかもしれない。

私にとって富山での講演会参加は3回目になる。前回は10月頃だったこともあり、雪・紅葉・岩肌の3色で彩られた立山連峰を眺められたが、今回はまだ、緑一色だった。

富山で私自身は、かなり「充電(リフレッシュ)」させていただいた。城址公園内にある誰もいない茶室で静かにお茶と地元の美味な和菓子をいただいたり、落ち着ける空気の喫茶店でサイフォンで出されたコーヒーとトーストを満喫した。いただいたものの質や落ち着ける空間の価値を考えると、都会に比べるとかなり安い。駅近くのスーパーでは、富山湾で取れた魚の寿司が安い値段で手に入ったことも記しておく。富山駅近くのビジネスホテルに滞在したが、黒部立山連峰からくる澄んだ水のせいか、室内の風呂に入った後の湯上り時の肌がさらっとしており、爽快だった。これらで得たエネルギーで東京での仕事を加速する。人間の「充電」は重要だ。

■「2035年頃までにCO2を40%削減する私案」と「究極の自転車?」(2022年9月23日)

2035年あたりまでにかなりのCO2排出量を減らして気温上昇を抑えないと、大きな問題になるかもしれない、と言われる方が結構いる。逆に、昨今のCO2排出増加と気象変動は関係ない、と考えている人達もかなりいるようである。

この数年、気象変動が大きくなっていると私も感じるが、仮にCO2増加と気象変動(異常気象)が関係ないとしても、エネルギーを無駄にしない、という観点から、CO2排出を抑えるべきだ、というのが私のスタンスである。ただし、何度も言っているように、論理性のない無理な希望論は私としては選べない。

昨年2021年11月から、このつぶやき・ささやきに「乗客が減った鉄道網で、既存の中・長距離トラック(や商用車)を載せて運んではどうか」と記してきた。大型車を載せる台車と鉄道に乗せるわずかな入口だけ、つくればよい。CO2排出量削減の即効薬である。では大量に出回っている既存の自家用車での即効薬はあるのか。海外でなされているように、バイオマス燃料や炭素の少ない燃料をガソリンに混在させることは、わずかな割合(数%程度)なら問題が少ないかもしれない。だが、10%以上混ぜることは容易ではないのではないか。なので、これらでもまだ、不足かもしれない。なので、更なる即効性のある解として、快適な生活は維持したまま、今後の20年間だけ、自家用自動車の利用頻度を減らすこと、を考えてきた。車で買い物に行く回数は半減させて2回分をまとめ買いすればCO2排出量も半減だ。そもそも、車で買い物に行く時、荷物を積むスペースが余っていることが多いからである。長距離運転の旅行回数は半分に減らして、二倍の滞在期間にする、か、電車での旅行の頻度を増やす。月曜日から金曜日までの5日間、車で仕事をしている人は、1日だけ自宅勤務になれば20%のCO2削減、5回に2回やめれば40%の削減である。従来とは別の観点から考えなおして、従来の四輪車利用形態以外でも悪くはない場合はそうにするのである。このくらいまでやれば40%程度のCO2削減になるのではないか。この2年半ほど、新コロナウイルスのせいで、県外への外出・旅行をひかえているせいか、私の自家用車の年間走行距離が、3年以上前の半分ほどになっているからだ。直近の一年もCO2排出量が半減しているようなのである。自宅にいる時間が長くなって、うっ血やストレスがたまるのを緩和するために椅子は新調した。私は30年間に5回ほどの引越しをしたのだが、その際のトラック輸送で、椅子の軸が若干曲がってしまっていたからある。今、思い返すと、自宅で子供用勉強机の椅子を何十年も使っていて、よく腰痛にならなかったなあと思っている。また、携帯電話で毎月定額を払って、聞き放題のヒーリングミュージックを流しながら、過去に撮った美しい風景写真を大きなPC用モニターで見て思い出したり、今後、行きたい場所を検索・想像する時間を増やして楽しんでいる。現代的な座禅のようなものかもしれない。旅行にかかる費用に比べれば、毎月定額の音楽への支払い額はかなり少ない。買い物はネット購入を増やしたので、その購入品を載せたトラックを鉄道網で運んでくれることを期待している。愛車(GTRのベース車両?であるCPV35)を乗り回すことを減らし、そのかわりに、自分で洗車する回数を増やしたので、車の調子も把握するようになり、以前より愛車が身近になった。そもそも、エンジンも人間と同じように空気を吸って二酸化炭素と水蒸気を排出するので身近な存在であり、家族が増えた感覚である。100円ショップで買った小さな化粧水用スプレーボトル1本にエタノールを入れて常に携帯しており、電車内のつり革や手すりを握った後はそれで手を消毒し、電車内ではマスクを2枚つけ、仕事場では一日に3回以上うがい・手洗いをしているので、インフルエンザや従来の風邪にもかからなくなった。(通勤時の123対策)自転車利用を増やしたら、今まで通らなかった道を通ることも増え、新たな美しい花々にも出会っている。昨年は宝石のような紫陽花、今年は美しい形の白薔薇に出会った。情報収集面でみると、ネット会議は数倍に増えており、ネット記事を読むのを少し増やしている。そして、待ち遠しかった対面での会合や出張の際は、数年前よりも集中力が上がっており、得るものも濃いように感じているCO2削減研究は研究室だけで行うものではない。自宅での生活スタイル検討も自家用車の扱いも全てCO2削減研究につながる。新コロナウイルスの経験は、私たちにより自然な生活スタイルを暗示しているのだ。

「運動不足解消や天気の良い日の気分転換」のための自転車利用を今まで以上に意識するということでもある。(日本や欧州では自転車の使用頻度をあげることもできるが、米国・中国では広すぎるのでバイクかもしれない。この5年程の間、各地でバイク事業の利益は上がっているようである。)

このようなCO2削減行動と新たな生活スタイルを既にとっている人は他にもいると思う。つまり、2035年あたりまでにCO2を40%程度削減する即効策の実行は既に始まっているのかもしれない。より多くの人々が、この静かで確実な策を進めることを期待し、祈念している。気象変動対策だけでなく、各自の世界を広げ、こころ豊かにするためである。

既存の車の年間走行距離のデータを、定期点検・車検時にディーラー等が書きとめていれば、全ての車の年間走行距離を積分することで、CO2削減の現状と先読みができるだろう。

新車の自家用車ではまず、HEV・PHEVを増やすことが2035年頃までの現実的な解だと、今でも考えている。今後の20年ほどの間の電池の価格等を考えると、BEVよりもHEVの方を多くの人が選択しやすいからである。世界中でHEVも推奨し、より多く売れれば、HEVの価格は更に下がり、より多くの人が享受できる。そうなると、CO2排出総量は更に減少する。なのでHEV用のエンジンの熱効率向上も重要である。私のところで提案している超高効率エンジンが実用化すれば更に確実性が増す。2035年くらいまでにBEVは30%程度までは増えるが、そこで一旦落ち着くだろう、という考えは変えていない。変える要因が私には見つからないからだ。

これなら車の生産・販売台数は減らさないので自動車会社も困らない。車に乗っても移動せず、そこで音楽と映画等を楽しめる空間にすることも一案かもしれない。

20年後までに、上記でCO2削減40%が実現され、しかも、その時までに、製造時にCO2を出さずに安価で航続距離の長い電池、か、高効率の水素エンジン等、その先の真のCO2削減策が見つかっていれば、そこからまた、人類は今まで以上に自動車に乗って楽しんでもよいのかもしれない。

ただし更に注意すべきことは、CO2を40%以上削減しても気象変動がおさまらない場合である。CO2は悪役ではない、か、CO2だけ考えているわけにはいかない、ことになる。前者であれば、CO2排出低減の意義を信じて強く言い過ぎてきた方々は、どのような思いになるのだろうか。後者の時は、新たな次元で対策を考える必要が出てくる。「燃焼や電池を含む化学反応のエネルギー源」と「ウランに代表される量子反応に基づくエネルギー源」の中間に位置するエネルギーレベルを自由に操る手段が必要になるはずだ。これには、様々な素粒子が関わってくる可能性がある、と考えている。なので独自の素粒子理論と「素粒子のエンジン」の研究も平行して進めているのである。

2035年頃までにCO2排出量を40%減らすことは、CO2が気象変動に与える影響を確かめる壮大な実験でもあるのだ。CERNのような巨大な実験よりもはるかに大きな規模で、しかも、人類全員で行う人類史上初の試みなのである。

[補足:自転車に乗っていると、親と小さな子供を乗せた重そうな電動アシスト自転車に軽く追い抜かれることが結構あり、少し悔しい気持ちになる。でも、その電池を毎回、充電する手間や、その電池製造時の電力でCO2が出ていると考えると、私は、自分の足(ミオシンーアクチンエンジン)だけで、すいすいと走りたい。そこで思ったのは、空気軸受けを車輪の軸や変速機の軸等に入れたらどうか、という案である。摩擦が減って、電動アシストに勝てるようにならないか、と思うのだ。車輪の軸を空気軸受けにし、それでクッションも効かせられれば、タイヤのクッション機能は不要になり、さらに細くて軽くて路面との摩擦を減らせるタイヤにできるかもしれない。そろそろ、そんな自転車もでてくるかもしれない。平地で自転車に乗っていて疲れるのは、長時間、こぎ続けた時である。車輪の軸等での摩擦が大幅に減れば、ちょっとこいで、ある速度になったらこぐのをやめても、そのままの速度で長時間、慣性で走り続けることができる。筋肉を休める時間も増えて、疲れもとれるだろう。起伏の多い場所での更なる案もある。この方式の詳細について強い興味・関心のある方は、別途、議論したいと思います。(なお、自転車利用を増やす人は、交通事故に注意してください。私は大通りでは自転車同志の正面衝突に注意し、細い道の曲がり角では減速し、ブレーキに手をかけたままにして、急カーブは切らないようにしています。)]

■既存の車の使用頻度削減がもたらす更なるCO2削減効果(2022年9月25日)

既存の自家用自動車使用の5回に1回やめるだけで20%のCO2削減の即効薬になるのは単純明快な話であるが、更なるCO2削減効果もある。車の使用頻度が減れば道路の渋滞も減って、(制限速度以内ではあるが)平均車速も高い方で走ることになるので、エンジンのみの車では熱効率の高い状態を使うことになり、燃料消費量が減ってCO2排出量が更に減る。(これはガソリンエンジンの技術者はよく知っていることだが、車速が大きいほど、吸気のスロットルを開くので、基本的に熱効率の高い条件が多く、これに対し、100㎞/hくらいまでであれば、空力抵抗はそれほど大きな影響はない。)また、エンジンだけの車で道路を走っている場合、渋滞しないときは、ほとんどブレーキを踏まずにすむが、渋滞するとブレーキを踏むので、運動エネルギー(つまり、燃料)を捨てることになる。アイドリング時に使用する単位時間あたりの燃料量は少ないものの、渋滞時間が長くなればその分、更にCO2排出も増える。なお、高速道路では、比較的長距離を走ることが多いので、長距離で渋滞すると、上記のロスの積分値は大きくなる。

自然に囲まれたところに行って休暇を過ごし、リフレッシュしてエネルギーをもらうことはできるが、往復路で渋滞すると、吸収したエネルギーの大部分がストレスで消えてしまう、と感じてきた。なので、その意味でも、車の使用頻度を減らすことはプラスになる。(2年半くらい前、新コロナウイルスが広がり始めたころ、ほとんどの人が外出せず、道路を走る車も激減していた時期がある。その頃は電車で移動するのも不安があった時期であり、必須の家事でしかたなく、自動車で100㎞程度移動したのだが、高速道路もガラガラで、その時の運転のストレスのなさが思い出される。)

バイオマス燃料をガソリンに混在させて燃焼する方策を進めるには、バイオマス燃料生成・蓄積・配送・給油設備が新たな出費とともに必要になる。そのために数年は必要で、その意味で、CO2削減の即効性も低いだろう。

新コロナウイルス問題で、情報機器の更なる利用が進んでいる。各自に無理を強いずに、自家用車の使用頻度を2/5減らすことはかなりできるだろう。明日からでも始められることだ。

■N社とT社のVISION(2022年9月26日)

公開情報だけをもとにして、私なりに、N社のVISIONを推測してみる。高価格帯の車は、そもそも、価格を気にしない傾向のある方々を対象としているので、実質的に300㎞を超える航続距離の大型BEVは、そこそこまで増えると思われる。(欧州の高級車メーカも似たような考え方であろう。)だが、全体からみた台数の割合は大きくはない。一方、国内に限定すると、軽自動車は高速道路をあまり走らないだろうと考えれば、航続距離は短めで良い。なので、実質的な航続距離100kmくらいの軽のBEVも、二台目保有や商用で、ある程度まで増えるだろう。ただ、公的な補助金がなくなったらどうなるか、を注視している。中間サイズの車は、独自性のあるシリーズハイブリッドで対応しており、このHEVが当面(少なくとも今後の10年程度)の経営の主軸と思われる。エンジンでは可変圧縮比化したものも提示している。軽と高価格帯の車ではBEVを中心において、その技術をみがき、信頼性も再確認しておいて、中間サイズのBEVのニーズが高まったら早く対応する、という考えだろう。柔軟性を持った構えに見える。ネット上の記事だが、「(2035年頃までにBEVが30%を超えていくかどうかは)世界全体の今後の消費者や規制等の動向を冷静かつ丁寧に見る」というような幹部の話があったと記憶している。

T社は、練り上げたパラレルハイブリッドが、シリーズタイプより少しは低価格なので、まだまだ、多くのユーザーに受け入れられやすい、と考えられるのではないか。もちろん、そのHEVには電池も搭載しているので、そこを起点にし、BEVのニーズが高まれば対応する姿勢も見せている。そのうえ更に、水素エンジンとFCVで、どっしりした多段構えだ。

この二社は、色合いは異なるものの、海外依存は減らし、社内の独自技術構築を忍耐強く継続している。そして全体を俯瞰しながら丁寧に深堀して、選択と集中も行いながら、確実性の高い段階的な短中長期計画を構築し、冷静かつ真摯に明示していると感じている。

私は10年以上、企業で仕事をさせていただいたが、現在は大学なので当然、あるべき論が強くでるが、企業は、規制がでればそれに対応しなければならないので、少し異なる構えになっていると言えるだろう。

なお、あるべき論を一点補足しておく。この数年間に、携帯電話会社のトラブルが何度か起きた。その際、多くの人が大変困ったわけだが、携帯電話会社が3社あったため、私はなんとかしのぐことができた。2台の携帯を持っており、一台は3社の中のひとつの携帯電話会社と、通常の通話とデータ通信ができる契約をしていたが、もう一台では、別の携帯電話会社のデータ通信だけできるSIMカードを購入し、それでショートメールをできるようにし、そのソフトで無料電話も可能にしていたからである。なので、自動車やエネルギーも2つ以上のルートを併用すべきであり、電気だけにするのではなく、燃焼形態も残すべきである。実際、この半年間に、欧州では燃料供給網が細くなって困っているという事実もある。

■BEVの高精度な総合的CO2排出量評価(LCA)(2022年9月27日)

BEV製造時のCO2排出量はそれほど多くはない、という記事がこの1年くらいの間に増えてきている。ただ、これについては以前も少し書いたが、電池を製造する装置、その装置の(部品群)の製造装置、その製造装置の製造装置・・・と続くもろもろの装置群の製造で発生するCO2排出量の積分評価(製造装置の連鎖によるLCA)をしているかどうかがずっと気になってきた。おそらく、今まで、エンジンを多く製造してきたので、もろもろのエンジンに関する製造装置の更新はそれほど多くはなく、したがって、CO2排出が大幅に増えることはあまりなかったのではないか。ところが、BEVの割合を大幅に上げて、それが主となると、電池の製造も大量になり、その電池製造のための装置群を新規に製造する時に排出されるCO2量が気になっている。

様々な産業の中で、自動車産業の規模は大きく、その動力系の大部分が電池に変わるとすれば、その産業規模も大きい。だからこそ、BEVをやろうとする方々が出てくるのであろう。その新たな産業・企業の利益の規模に関係(比例?)して、CO2排出されることは一目瞭然ではないだろうか。2035年あたり以降のために、今、CO2排出量を増やすことになれば本末転倒ではないか、と思っている。

なので私の中では、正確なCO2排出量評価(LCA)をすることは、世界経済全体の予測、ということになるのではないか、という疑問に行きついている。不思議なことに私は、2010年頃に、独自の経済変動予測(ジュグラー・クズネッツ・コンドラチェフ等を含む経済の周期的変動や恐慌の予知)の巨視的理論を、応用数理学会の論文等に出してきており、その理論式を土台に、この予測ができる準備はできてしまっている。(ある範囲の予知では特許も出してある。)若い人が興味があればこれもやるのだが、学生は、これよりも独創的なエンジン構築・生命医学・量子統計流体力学理論の研究の方に関心が高い。この経済予測ではビッグデータを扱う作業によって、理論の式中の定数を決めることになる。評価がでるまでに数年は必要だろう。なので、即効薬にはならないと考えている。最も重要なことは、比較評価論ではなく、具体的な短中長期的CO2削減案の提示なのである。

上記のようなBEVの高精度なCO2排出量評価をすると、BEVに関わる産業・企業創出に伴うCO2排出量がわかるのではないか。その程度がはっきりするまでは、直近の10年はまず、BEVよりも確実なCO2削減の即効薬(鉄道網での既存トラック等の輸送+既存の自家用車利用頻度の40%低減によるリフレッシュ生活+新車のHEV)を第一に置いた方がよいだろう、というのが、現時点での私の考えである。

■いつ完全燃焼させたらよいのか?(2022年9月28日)

今日、ある若者から、「人生の中でいつ、完全燃焼させればよいのか?」という質問をうけた。なかなか、面白い質問だと思う。

エンジンでは、「いつ、着火させるか」になる。どの時期に着火させるかは、燃焼安定度・熱効率・出力・Emissions等を大きく左右する重要な因子だ。早すぎれば着火しにくく不安定燃焼になる。遅すぎても同じだ。いずれでも、熱効率や出力は高くはならないことが多い。最適な点火時期がある。

この質問に対して、2つの側面から軽く記してみよう。1つ目は「長い人生全て、全力疾走せよ、とういうことではない」という点からである。2つ目は「私は、いつ、完全燃焼させようとしてきたか」である。

「長い人生全て、全力疾走せよ、とういうことではない」という点から基本を言えば、一週間の7日の間に日曜日があることだ。現代で言えば、土日かもしれない。土日か日曜日だけかは人によると思うが、人間社会では、休暇が定期的に設けられていることだけ考えても、全力疾走しつづけるのは無理がある。走り続けたら息切れしてしまう。もちろん、土日も仕事をしている時期だってありえるし、私自身も時期によっては、土日まで仕事に追われることもある。一日の間で考えても同じで、夜に寝ることは必須である。2022年8月18日にも書いたように、一月単位、数年単位、十年を超える単位での緩急も必要なはずである。

「人生を完全燃焼」というと「休みなしで全力疾走せよ」と言われたと勘違いする人が時々いるので、念のため、最初に記しておく。

次に、2つ目の「私は、いつ、完全燃焼させようとしてきたか」だ。全力をかけて突進するタイミングのことである。まずいえるのは、若い頃、あらかじめ「突進するタイミング」を決めてきたわけではないことである。基礎をかためながら、情報も収集しながら、アイデアを出す努力もしながら、休養もとりつつ、「今、突進すべきだ」と判断したら、猪突猛進した。突進するかどうかを判断する仕方のひとつとその事例は、2021年3月11日、このつぶやき・ささやきに記した。5つ以上のプラス要因が見つかった時である。ただし、5つなんか集まらない場合もあると思うので、5つという数にこだわる必要はないだろう。2つくらいで判断することもあり得る。

謙信が川中島に出ると判断した時で言えば、海津城からあがる炊飯の煙が増えること、と、信玄がきつつきの戦法で出てくるだろうと分かったこと、の2つはあったと思う。更に言えば、謙信の兵力が信玄の半分以上はあったこと、川中島に出たら信玄だけを狙えば良いことに気が付いたこと、も判断材料になったのではないか。これで4つである。4つのプラス要因では不足だったため引き分けになったか、とも考えた。なお、桶狭間の戦いでも、劣勢の信長が、大群の大将である義元のみを狙ったと小説には書かれている。有名な川中島の戦いはその翌年らしい。なので事実であれば、謙信は信長の戦からも学んだのかもしれない。歴史に学ぶことの重要性がここでも垣間見られる。桶狭間と川中島の戦いの順序が逆であれば、信長が謙信に学んだのかもしれない。

具体的に、私が突き進もうとした時期はいつか。一回目の突進は、就職して1年ほど経過した時である。それまで、定量性のあるエンジン燃焼のシミュレーションモデルは存在していなかったのだが、それを構築できそうだと判断した時だ。この時は6つのプラス要因(2021年3月11日のつぶやき・ささやき参照)を見出している。27歳くらいの頃(1990年頃)だった。二回目の突進は、2000年あたりに山形大学に移った頃である。生命とは何か、という大問題に対する独自の理論を導出できた頃である。これに突進すると決めた際のプラス要因は3つだった。生命理論そのものが導出できたこと以外に、この理論がエンジン性能向上検討にも寄与できる面があったことと、山形大学に移って自由を得たことである。三回目の突進は2010年頃、超高効率エンジンと素粒子のエンジンの案がかたまった頃である。これに突進すると決める際には、7つのプラス要因(2021年3月11日のつぶやき・ささやき参照)があった。なので、大まかに言って10年に一度くらい、完全燃焼すべく突進し、突進(着火)を始めてから10年間くらいは粘り強く進めてきた。この3回の突進では、特許を取得したり、実用化に寄与したり、学会・論文での多数の表彰を受けたりしてきている。

(補足:この三回の突進以外に、2008年頃、もうひとつ、突進に近い状態になったものがある。それは、100年を超えて謎とされてきた乱流遷移現象の新たな理論とシミュレーション方法の提示である。本来、これは、生命を含む広い範囲に適用できるので、これだけでも一つの研究室を数十年以上進めるための原動力になるテーマである。ただし、これは超高効率エンジンと素粒子のエンジンの性能検討への適用を中心に絞って進めてきた。)

三回目の突進となった「超高効率エンジンと素粒子のエンジン」は、突進を始めてから10年程度経過しているが、事が事だけに(あまりに大きな飛躍であるだけに)、まだ、手を抜くわけにはいかない。大きなヤマ場に差し掛かっている状態だ。ただ、四回目の突進をそろそろ始めるとすれば、それは、生命医学(大病の事前予知とその対策)と人工天才脳だと考えている。エンジンでは既に2つの突進をしてきたが、生命ではまだ1つしか突進していないからだ。突進も2段階くらいで進めると良いのかもしれない。このくらいまでやれば、「完全燃焼できた」と納得できるのではないか、と思っている。

 [補足:もし、私が自動車会社にいたと仮定して、BEVに進むと判断するために、現時点で考えられるプラス要因をさらっとあげてみる。(1)軽自動車は高速道路はあまり走らないので航続距離150㎞くらいでもよいかもしれない、(2)高級車は価格が高くても売れるかもしれない、(3)今後の電池性能向上推定によれば、20xx年頃には補助金なしでも買う人が大半になるかもしれない、(4)マンションに住む人の割合は多くはないので充電設備問題は小さいかもしれない、(5)主力車種ではシリーズハイブリッドの技術を土台として、ニーズに合わせて電池の割合を増やせばよい、(6)政府が脱炭素を目指すとはいっているが、多くの国で厳しい法律になるのが20xx年だろう、くらいは考えられる。問題はxx年がいつかだが、私の評価は、xx>60のままである。仮に全固体電池等が出てきても値段が安くなる確証が持てない等、懸念がぬぐえないからである。なお、私なら、北欧の一国でBEVの割合が高いのは要因にはあげない。ある国でBEV割合が多いから他の国でも多くなるという言い方は論理的ではないし、非常に特殊な事情があるようだからだ。BEVの加速の良さを言いたい人がいるかもしれないが、シリーズHEVも加速は良いのでプラス要因にはならない。そもそも、現在の車のエンジンパワーはありすぎるくらいになっているし、加速性能を購入の第一理由にするユーザーは多くはないだろう。最近、欧州でもようやく、BEVだけでは難しいという意見が再度、増えているようである。HEVと水素エンジンである。]

■人生を完全燃焼するための3つのステップ(2022年9月29日)

3つのステップとは、基礎知識吸収、それらの融合による知恵(アイデア)の創出、爆発的突進実行である。これらの3つをエンジンで例えれば、吸気圧縮、燃料と酸化剤の混合、着火燃焼、である。その後、排気はやらないと、次の吸気ができない。理工系の人生での排気は、論文・特許・発表・技術の実用化・商品の創出や事業・プロジェクトの完成・成功等だろう。

なので、「突進」にいたるまでに、この3ステップがあると言える。その各ステップの途中にも分岐点はあり、どちらの方向に進むかの判断が必要になる場合も多かった。その時、私は「最悪(最低限)、何が得られるか」も考え、それに大きな価値があると判断できる方向に進むように意識してきた。価値とは、肩書等の表面的なことではなく、中身である。

■素粒子理論・素粒子のエンジン・量子統計流体力学がもたらす意義の大きさ(2022年9月30日)

私の研究室では、10年以上前から、素粒子分裂現象を説明する独自の理論や、不確定性を考慮した新たな流体力学を提案してきていることは、折に触れて記してきた。(このHPのResearchにも大筋を記している。)

素粒子というと、ハドロンやクオーク等の名称が目立つが、電子や光子も含まれている。また、不確定性は量子現象で重要である。なので、私の研究室を巣立った若者達が社会に出てから、電池や半導体に関して、従来と異なる視点から新たなアイデアを生む可能性もあると考えてきている。実際、私の研究室では、電池・半導体・情報等の一流の研究開発組織に就職する学生も徐々に増えている。更に言うと、私の研究室の研究内容に関心を持つ電気・情報系の企業も増えている。

もちろん、まだまだ、燃焼、エンジン、自動車、エネルギー、航空宇宙関連等に就職する人も多い。

■BEV購入者の年間走行距離と電池製造時のCO2排出量の関係(2022年10月2日)

現時点では、エンジン車やHEVに比べてBEVの走行可能距離は短いものが多いだろう。なので、短距離利用者が主にBEVを買い始めたとすると、BEVの年間走行距離も短いのではないか。私がこの2年間、新コロナウイルスのせいで年間走行距離半減できた理由は、長距離運転を減らしたためだからである。そうなると、その電池の製造時のCO2排出量に見合うだけの距離を年間に走行しているかどうかが気になっている。BEVの年間走行距離が短いのであれば、HEVよりも長い年月使用しないと、製造時のCO2排出量に見合わなくなるだろう。ところが、BEVの進歩が急だと、短期で次々と新たなBEVに乗り換えたくなるのではないか。これは、2000年以降のデジタルカメラの急増を見ていて思うことである。つまり、もし、このような意味でBEVが急増することになると、不便さと違和感を感じながら2035年までに多くのCO2が排出されることになるということだ。

このあたりの評価は今後、なされていくであろう。まだ、小型で短距離のBEVが増えつつある段階なので、上記の評価のためのデータはこれからようやく集められるからである。

■22世紀のエンジン(2022年10月2日)

私どもが提案してきた「多数の気体噴流群を一点衝突させて高圧縮する方式」では「振動騒音レベルをあげずに高圧縮比+大幅断熱(多様な用途でエンジン単体で熱効率60%超)」と「素粒子反応で燃焼を凌駕する出力」を狙える。なので”万が一”、BEVが主流になりそうになっても、私はこのエンジンしかやる気になれない。この20年間はガソリンHEVに貢献し、しかも水素エンジンやFCVと共鳴しつつ、

素粒子のエンジン(Fusine)で更に、BEVよりもはるか先(22世紀以降)まで見通せるかもしれないからである。2035年頃までにである。

■3つ目の万能薬?(2022年10月7日)

私が大学生の頃、脈動流型の人工心臓の研究をされている先生がおられた。ふと、定常流型の人工心臓をつくってみたい、と思い、「卒論でやってみたいのですが」と相談に行った。生命にとって脈動が必須のものかどうか、知りたくてしょうがなくなったのである。生命とは何か、を知るための起点のひとつがわかるかもしれないと思ったからである。ところがその先生は、「既に半年程前に、ヨーロッパで始まったのでやらない」との返事だった。半年程前に始まったばかりであれば、日本でもやればよいのになあ、とは思ったが、そのやりとりをしながら私の脳裏に浮かんだのは、人工心臓で治療できるのは心臓だけで、それ以外の臓器の治療法には発展しない、ということだった。様々な臓器の病気を治すには、化学的な方法の方が良いだろうということに気が付いた。万能薬、もう少し広い表現をすると、万能な治療法、が生み出せるかどうかを考え始めたのだ。なので、人工心臓にこだわらないくてもよいだろう、と判断した。

数日前に「完全燃焼に向けて突進するべきとき」と「思いとどまるとき」についてふれたが、これは「思いとどまった時」の一例である。

それ以後、万能な治療法について考えるようになった。1995年頃の新聞に、IPS細胞の研究が出てきて、これは万能な治療法になりうると感じた。そこから20年程経過して、その実用化が近くなっている。それ以外の万能な治療法(万能薬)としては、点滴がある、と学生達に話してきた。点滴(生理食塩水+α?)は、様々な病気の人に使われているからである。最初に点滴を考えて実施した人はドキドキしたと思うが、後になって考えれば、生命の体の70%は水なのであるから、自然なことと感じたかもしれない。(ただし、点滴の成分は少しでも間違うと命の危機に直結する。医療の法的なルールも含めて徹底した注意が必要だ。)

私が3つ目の「万能な治療法」を見出したのは2007年頃である。それは、生命体内の反応を巨視的に記述する6変数程度の非線形常微分方程式を導出した時である。これで大病の事前予知の研究を進めてきている。予知ができれば、従来の個々の治療薬(治療法)で早めに(重篤になる前に)対処するのである。

■「低騒音型高圧縮比+大幅断熱」エンジンの最近の燃焼実験結果(2022年10月8日)

私の研究室で提案してきた「多重衝突噴流圧縮エンジン」では、地上用と航空宇宙用の2種類のエンジンを試作・改良して燃焼実験を進めてきている。地上用では一昨年からノッキングしにくい特性が得られてきており、これは、従来より圧縮比をあげて熱効率を上昇させる可能性を示唆するものであり、関心が高まってきている。航空宇宙用では2016年から大幅な断熱を示す実験データを繰り返し得て公表してきたが、更に昨年から燃焼安定度がかなり改善されるとともに推力が上昇してきている。地上用については11月21日~24日の内燃機関シンポジウム(東京)で4本の論文発表、航空宇宙用については11月1日~4日の宇宙科学連合講演会(熊本)で2本の論文発表の予定である。まず、Fugineで2035年あたりまでの貢献をするためである。

今朝、ネットを見ていたら、T社が水素エンジン車を市販する、という記事が出てきた。全てのエンジン研究開発者と車好きを熱くする知らせだろう。私の推定スペック(希望)は「水素エンジンのパラレルハイブリッドシステム+ミライの燃料タンクで航続距離300㎞の4人乗りが250万円(公的補助金無し?)」である。この航続距離は5年以上経過してもほとんど減らないはずであるとともに、個体差は少なく、航続距離の残量が急に減ることもないだろう。ハイブリッドにするのは、熱効率の高い運転条件のみでエンジンを使用できるので燃料タンクを大きくせずに航続距離を確保するためである。だがメリットはそれだけではない。万が一、エンジンでプレイグ等が起きたときはしばらく、バッテリー走行も可能になる。プレイグが起きやすい運転条件で電池で走行することもありえるだろう。(水素エンジンのシリーズハイブリッドシステムであれば、更にプレイグを回避しやすいはずである。)最初のモデルでは、後部座席をワンマイルシート的にしたスポーツタイプか小型SUVかもしれない。さて、私のスペック予想が当たるか外れるか、楽しみにしている。T社のガソリンハイブリッドシステムの燃料タンク・噴射系・制御系を変更すること以外、やることはあまりないのではないか。そうであれば、登場は早くて来年の後半、遅くても3年以内か。

「BEVを加速させよう」という過剰?な発言の連鎖が、エンジン屋の魂に確実に火をつけたのかもしれない。静かに黙ったまま、心に熱い血潮の激情が湧き出したのである。

遠い昔、火の利用に気が付いてから、人類は生活の幅を飛躍的に広げるとともに、その炎のぬくもりに寄り添うことで、やすらぎと生き抜く力をもらい、人生を謳歌してきたはずである。なので、エンジンがなくなる日はないだろう。エンジンは生命そのものだからである。

■3つ目の万能薬(大病予知理論)とエンジンの関係(2022年10月13日)

10月7日に記した「大病予知の理論」の方程式(6元連立の非線形確率微分方程式)には、化学反応の基本法則を適用している。ただし、エンジンの拡散燃焼の反応理論も加味している。生命体内反応でも空間的に不均一な場合が結構あるからだ。なので、エンジン研究が生命基礎医学(新たな解体新書)の提示にも貢献しているのである。(注:拡散燃焼とは、最初、燃料と空気(酸化剤)が空間的に異なる場所に存在しているのだが、その後、燃料と空気の接触領域付近で両者が拡散することで混合し、そこが着火しやすくなって燃焼を開始することである。なので、燃料が空間的に不均一な燃焼形態である。)

■自車事故増加のニュース(2022年10月14日)

9月23日に、快適な生活は維持したまま、自車利用頻度を減らす方法を記した。その代わりに自車利用を増やすことを書き、更に事故に注意すべき、とも追記したが、今朝のニュースで自車事故が増えていることが報道されていた。
車事故が増えているのは、新コロナウイルス対策として自転車利用が増えているからではないか、と思っているが、CO2削減の意識が芽生えていることもあるだろう。

■ピンチはチャンス(2022年10月15日)

時代が大きく変わるとき、「ピンチはチャンスだ」と言いつつ、具体的な提案をして、次代を切り開いてきた方々を何人も見てきた。最近では、新コロナウイルスで自動車生産が一時的に減速した際の、ある自動車会社のTOPの発言が思い出される。

「生産設備を最新の高精度・高速のものにするチャンスであり、それで、今後の新車の品質を大幅に改善できる。自動車生産が以前の様に盛況だと、生産ラインを止められないので、設備の入れ替えがやりにくかったからだ。」という発言である。

2030年から2050年あたりに、BEVとPHEVレベルだけにしようとする動きは、エンジン研究開発者にとっての「ピンチはチャンス」である。今までのHEV主流のシナリオのままで進むと、従来型の炭化水素燃料エンジンの連続的で地道な改良を継続し、水素供給場所は増えにくく、水素エンジンもFCVもなかなか増えにくいことになる。しかし、予想より早くBEVとPHEVレベル(CO2排出ゼロ)だけ、というような政治的指針になると、飛躍的な熱効率向上が期待できる新たな形態のエンジンとその水素利用への関心・シフトが早まるだろう。BEVだけでは見通しが効かないと考えている人も多いからである。従来のHEV重視の方針のままでは、価格と水素供給場所等の点でFCVの普及には時間がかかる可能性があったが、水素エンジンへの関心が急速に高まると、それによってFCV普及を加速できるからでもある。

海外でソーラーや風力発電が増加するとなると、その不安定さゆえに、蓄電池だけでなく、水素の形でのエネルギー貯蔵も増えるのではないか、と考えてきている。

■素粒子のエンジン(22世紀のエンジン)にまで突き進むと決めた根拠(2022年10月17日)

2021年3月11日のつぶやき・ささやきに、「超高効率の燃焼エンジン」と「素粒子のエンジン」に突き進むことを決めた7つの根拠を記した。「低騒音型高圧縮比+大幅断熱で熱効率60%を超える燃焼エンジン」だけでも大きな課題なのに、何故、その先まで同時に進めたのか。その第一の理由は、いずれも多重衝突パルス噴流圧縮原理に基づいているからである。ただし、他にも理由がある。それは、私のところで20年以上前から提案してきた量子統計流体物理学の理論が、よく知られた素粒子、原子核、分子、細胞、液粒等の様々な粒子の分裂後の粒子径を説明できるだけでなく、弱い原子核分裂現象(凝縮系核反応によって生成された元素)をも説明できたからである。提示してきた理論が本質的に普遍的であることがわかったのと同時に、未知の現象が起こるうると実感したのである。

■学会発表時の質問のための準備(2022年10月18日)

今日、ある学生が、「進めている研究で得られた〇〇の結果についていろいろと考えているが、明確な解釈ができていないので、学会発表した時に、この点の質問が来たら答えられないので不安です。」と言ってきた。私は、「それなら、不安になる必要はない」と即答した。何故、不安になる必要がないか?考えてみてください。その理由は一日程度経過してから記載します。

■質問への答え方(2022年10月19日)

10月18日の質問が来たらどう答えるか、だが、答え方は簡単である。「〇〇の結果についていろいろと考えてきているが、明確な解釈はまだできていない」である。この学生が私に言った言葉のままでよいということである。ただし、不安になる必要はない、と言ったのには、いくつかの理由があるので補足しておく必要があるだろう。

ひとつは、多くの学生は、発表時に質問が来ると、固くなってなにも答えず、だんまりになることが多いからである。黙ったまま、なのと、何かを答えたのでは 雲泥の差がある。黙ったままの学生に対しては、質問者はその後、言いにくくなるので、結局、学生が得ることは少ないが、何か答えれば、その答えに応じて、質問者は、何かをアドバイスすることが多いのである。

もうひとつは、この学生が「いろいろと考えてきている」と言ったことである。しかも、「〇〇の結果について」という具体的な前置きもあった。つまり、ある程度、具体的な返事ができる状態になっていたからである。「学会発表した時に質問が来たら不安です。」だけなら、誰でも言うがそれでは、曖昧模糊として問題点が絞られておらず、具体性に欠けているのである。

3つ目は、質問がきそうな点について私に事前相談する心のゆとりがあるからである。この学生が私に聞きにきたのは、発表の半年前だった。発表まで半年あるので、それまでにもう少し、答え方がみつかる可能性があると感じたのだ。かなりの割合の学生は、発表用のppt作成に時間がかかり、質問対策のやりとりの準備までを発表直前になってもできないのである。

更にいうと、相手が質問したということは、相手も明確な答えは持っていないことが多いはずであるので、不安になる必要もないし、気後れする必要もない。そこで議論して、何か得られればよい、と思って自然体でやりとりすれば良いのである。

もちろん、いろいろな質問が来たとき、その中のひとつか二つには明確な返事をできる方がよいので、なんでもかんでも、「明確な解釈はまだできていない」でよいわけではない。学会発表も回数を重ねるうちに、ある程度、具体的な返事ができるようにしていくべきであること、も言うまでもない。

質問が来た際、押せるところは押して力をかけ(気迫を見せ)、押せないところは素直に聞いて相手の考えを収すればよいのである。エンジンのサイクル(縮と気)と同じである。

付け加えると、学会発表では基本的に卒業修了条件に影響する採点評価をするわけではないのだから、不安になる必要はない。ただし、多くはないが、学会での発表がキッカケになって就職に結びつくこともありえるので軽くは考えない方が良い。なのでやはり、何か答えた方が、黙っているよりずっとよいことが多いだろう。なお、念のために記すが、考えも調べもせずに、やみくもに一か八かの賭けに出て、決めつけるような返事は、黙っているよりもよろしくないだろう。

■私の最初の学会発表(2022年10月21日)

私は、最初の発表で不安だったか? 思い出してみると、最初の発表時の聴講者が100人を超えていたので、かなり緊張はしたし、不安もあったが、質問時に黙ることはなかった。学生時代に高田馬場界隈で、いろいろな仲間と飲みながら人生・将来について多くの議論をしたことが効いていたように思う。入学当初はサークルに入っても何も話せなかったのだが、仲間や先輩との雑談が、質問時のやりとりの訓練になったのである。

質問に答えられた理由は他にもある。就職してから初めて学会発表したのだが、その成果の内容(エンジンの圧縮行程における乱流遷移現象の解明とそのために提案した方法論)に、新規性があると考えていたので、ある程度の自信が持てていたからでもある。ただし、本当に新規性があるかどうか、が不安ではあった。100名もいると、誰かが「従来研究に同じようなものがある」というのではないか、と思ったからである。

つまり、私の研究とその発表時の重要ポイントは、新規性にウェイトがかけられており、新規性があれば当然、聴講者にとっては目新しいので質問がくることになるので、その意味では不安になる必要もない。ただし、新規性というのは、それが産業や社会に良い影響を生み出す可能性のあるものであることが前提である。前例がないというだけで、社会貢献効果が薄いものは、新規性とは言わないので、(私が追い求めているのは)「独創性」といっておいたほうがよいかもしれない。

(なお、以前も書いたが、社会に貢献する時期が100年後ということもあり得る。理学・原理的な研究は長期の社会貢献、工学的研究は即効性、という傾向があるかもしれない。前者の例はガロア、後者はエジソンだと考えてきている。

この成果では、その数年後にエンジン性能向上に寄与するとともに、いくつかの学会で論文賞を受賞した。

■HPのProfessorの欄に追記(2022年11月22日)

一か月間、かなり集中力を必要とし、忙しい仕事が入ったので、久しぶりにここに記す。

明日、私の研究室の4名が学会発表し、また、そろそろ、卒修論発表が近づいてきた。なので、発表用のpptが完成した後から発表登壇までの間にするべき基本事項を、Professorの「卒修論・学術論文執筆・学会発表資料作成の基本」の欄に緑色で追記した。

■水素の源泉(2022年11月26日)

2035年あたりまで、まだまだ、ガソリンエンジン+電池のHEVが増加するだろうという私の考えは5年程前から何度も述べてきた。その後、徐々に炭素の少ない燃料が増えるのではないか、とも述べてきた。例えば、水素はまず、飛行場・各種の工場・自動車販売店等での利用・供給が増えるだろうとも記した。水素貯蔵の安全確保がしやすいからである。

昨日、ある若者から、その水素の供給源は何か?どこか?と聞かれた。良い質問である。

欧州では、風力発電の有効性が高い国もいくつかは存在する。だが、年によって風が弱く、安定供給が十分ではないときもあるようなので、それらの国では、総使用電力量をかなり上回るまで、風車を増やす可能性があると思っている。そうなると、電力があまる時期がでてくることになる。ソーラーも同様だ。その余剰電力は、電池に貯蔵するよりも、電気を使って作成した人工炭化水素燃料や水素の形にして貯蔵し、それを自動車に利用する可能性があると考えている。これがしっかりした形になるのは2030年以降だとは思うが。

日本ではどうか?まだまだ不透明ではあるが、ひとつの可能性は豪州からの水素等、低炭素燃料の低価格供給である。この報道は5年以上前から散見されている。もう一つの注目点は、安全性の高い原子力発電を進める企業が増加しつつあるという報道である。これらによる低炭素燃料と人工炭化水素燃料が低価格であれば、水素エンジンが増える土台になるだろう。(それでも、2050年に化石燃料をゼロにするのは難しいのではないか、と現時点では思っているが、30%程度を炭素のない燃料にするくらいの目標は現実性があるだろう。)

これらを起爆剤とし、しかも、化石燃料使用の規制が強くなると、化石燃料より少し高価格でも、水素等の低炭素燃料が増加するのかもしれない。また、最近のガソリン価格・電気料金を見ていると、水素や低炭素燃料との価格差がなくなって、水素の普及が進む可能性がある。その時までに、私のところで進めている「大幅断熱+低騒音型高圧縮比」で、水素エンジンの熱効率を上げ、更に電池と組み合わせてハイブリッド化すると、燃料電池に近い熱効率になるので、その普及は加速するだろう。おそらく、システム全体の価格は燃料電池やBEVよりも安く、しかも、高効率なら、ユーザーが使用する水素燃料量を少なくでき、そのコストも減らせるからである。

いずれにしても、様々な点で変動が大きく不透明な時代になると感じている。このような状況になる可能性は、三十年程前から感じてきた。だからこそ、2035 年以降のために、多くの人が理解できない新たな可能性を試すことも重要なのである。私が考えてきたその最重要候補が、素粒子のエンジンである。(わずかな水素ガスとわずかな量の金属粒子を用いて、放射線を出さずにわずかに原子核を崩す形で燃焼の100倍レベルの動力エネルギーを得る方式だ。)これは、移動体の動力機構としてだけでなく、発電の新機軸、の意味も持っている。燃焼の100倍のエネルギー放出であれば、その水素使用量と価格はごくわずかということになるからだ。

そして、2035年までの為には、既存の自動車の年間走行距離を半減する新たなライフスタイルを進めている。(先々月に、自家用車の年間走行距離を半減してCO2半減しながら、快適な生活を送るすべについて記したが、商用車でも、ある程度、同じことが言える可能性がある。)また、ガソリンHEV用エンジンの熱効率の10%以上向上も進めている。HEV用のガソリンエンジンが10%以上の熱効率向上となれば、BEV以上にCO2の総排出量が減らせるか可能性も増すからだ。

その上で更に、水素エンジンが増えれば、LCAでみて更に大幅にCO2排出量が減るはずである。

■噴流群の一点衝突の安定性(2022年11月26日)

昨日、中学生から「高速気体噴流群を一点で衝突させることは安定にできるのか?」という質問があったので、これが可能である理由を更にResearchに緑色で追記した。

■カーボンニュートラルよりもクライメイトリペアー(2022年11月27日)

トランスミッションがニュートラル状態では自動車は進まない。炭素も同じで、ニュートラルという言葉を使っているうちは、地球の大幅なCO2削減は進まないように思う。2050年までの重要事項は気象変動対策(Climate repair)である。

■ブリージングアウトサイドとエンジンバーソロジー(2022年11月27日)

ブリージングアウトサイドは、Breathing outside the Earthである。地球外惑星まで生存圏として広げて、そこの天然資源を地球にもたらすことを、人類の2050年~2100年の目標にして今から掲げてはどうか、という意味である。地上の小さな土地の奪い合いではなく、広大な宇宙に新天地を獲得するのである。リチウム等が不足するのであればそれも地球外に求められないか。この為には、エンジンパワーが従来よりも桁違いなものが必要になると考えているし、年単位の宇宙生活で健康を維持するための新たな生命医学も必要になるだろう。前者のために「素粒子のエンジン」、後者のために「生命のエンジン」の研究を進めている。

これらを加速するために、2015年頃から「エンジン宇宙学(Engine-verseology)」を提示してきている。エンジンの研究を進めることはエンジンの環境性能を向上させるだけでなく、エンジンの中に生命や宇宙の様々な営みを垣間見ることになり、それが、様々な分野に関する科学技術のアイデアを生む。「素粒子・原子・生命分子・生命細胞・液体燃料・天体等の様々な粒子の分裂現象の相似性の観察から、新たな素粒子のエンジンと生命基礎医学が生まれること」はその一例なのである。

■水素と酸素を別々に生む電気分解(2022年11月29日)

昨日、イスラエルで安価に水素が製造できる可能性のある方法が示された、という報道があった。直観的な印象だが、面白いかもしれない。

■日本画像学会が研究室訪問(2023年1月15日)

日本画像学会を支えている企業の中には、コピー機、プリンターを研究開発製造している企業が多々ある。一年以上前に、この学会の運営チーム数名が、私の研究室に来られた。その際のオンラインでのやりとりの中で、「アイデアの出し方についてどのようなアドバイスを学生達にされていますか?」というものがあり、それも含めて、その時のやりとりが、この学会の学会誌に掲載され、先日、私のところに冊子が送られてきた。

やりとりの中で私が感じたのは、「今後、書類の電子化が進み、コピー機の需要は伸び悩む可能性があるかもしれない。なので、異分野の研究者にも意見を聞いて、新規事業を探そうとされているのではないか」ということである。昨今、自動車の動力系は電池にシフトするのではないか、という報道も多かった。だが、その中で、私は、「CO2の大幅削減できる新たな原理を提示しているので、まだまだ、数十年以上に渡り、(燃料は変わっても)エンジンは主である」と述べ続け、しかも、エンジン技術を土台にしながらも、それを超越した具体的なアイデア(素粒子のエンジンや生命のエンジン)を提示してきたことに注目したのではないか、と考えている。従来の研究開発・事業分野の枠組みを超えているからである

学科に所属している学生さん達は、その枠で勉強を進めているので、異分野交流ということはまだ、理解しにくいことが多いと思うが、一つの分野を深め、力がついてきたら、異なる分野のことに視野を広げることも大切になる。

このやりとりで最後に感じたことがある。それは、今後、私の研究室の学生達の中から、この分野に就職する人も増えるかもしれない、ということだった。そのとき、この学会やそれを支える企業は、新規事業を見つけているのかもしれない。

■エンジン事業の大きさと底力(2023年2月9日)

2035年くらいまでの確実なCO2半減策として、私達一人一人がライフスタイルを見なおし、今まで以上の快適な生活を送りながら、既存の車の年間走行距離を半減する案を、昨年後半に述べた。

これは、今後の自動車生産台数を減らすことにはつながらない。人間が車を必要とする本能的な欲求は半減できても、ゼロにはできないはずだからだ。報道がこぞって取り上げるほど、自動車の魅力は大きく、まだまだ、少なくとも2035年まで、世界全体で自動車は増えるだろう。愛を増やす道具だからである。少なくともその時までHEVは増え、エンジンはなくらないはずである。

だから、政府等が多額の補助金を出し、BEVを後押しするのだろうと私は考えている。そうしないと、2035年以降にBEVが増えにくいからだ、と思うのである。

むしろ、あまり報道にも取り上げられないまま、エンジン以外で2035年までに消えていく商品や事業があるだろうと推測している。

2035年以降はどうなるのか?私の研究室の内外で、水素エンジンが増える兆候も増えてきている。

■ダイヤモンドの原石の様なデータ(2023年2月11日)

私の研究室で行っているいくつかの研究課題で得られた実験やシミュレーションデータの中にも、ときどき、ダイヤモンドの原石の様な素晴らしいデータがある。このようなデータは原石なので、表面は光り輝いておらず、若い研究者は見落とすことが多い。これが見分けられるようになると、研究成果の質は格段に向上し、研究成果の量も急増することになるのだが。(3月半ばと4月半ばのSAEで、驚くべき研究成果を発表する。私には、この結果がでる可能性が高いことは一年以上前の非燃焼シミュレーションデータと実験データから気が付いており、学生達には、「〇〇〇〇〇という大きな目標を設定するように」と言っていたのだが、学生は「無理です」の一点張りでだった。)

逆に、ガラス玉をダイヤモンドと見間違う若者もいる。(一例を記すと、何年も前の燃焼シミュレーション結果ではまだ、エンジン性能検討を継続する必要があるのに、学会発表で燃焼計算まで見せれば評価されると考えていたケースである。)このあたりを見分けるすべを教えるのは容易ではないが、重要なことのひとつは、ある程度の基礎知識をしっかり持ったうえで、常識を覆すような大きな目標を持って挑戦することだろう。その上で若いうちは「見落とさないぞ」という気持ちを持って、集中して事象(現場・現実・現物・現象)をみることが重要である。

ガラス玉ばかりしか出てこないと、ダイヤモンドの原石はないのではないか、と早々に諦めそうになる若者も多い。なので、この点で、大きな目標を掲げる研究は、教員(研究リーダー)にとってやりにくい面がある。教員自身に忍耐力と確信があっても、若者の意欲と忍耐力を向上させることは、研究成果を出すことよりも難しいかもしれないからである。この点をカバーする方法は、教員(研究リーダー)が問題の核心を見極め、若者が確実に成果をあげられる具体的なアドバイスをすることである。

■BEV急増はCO2排出量を倍増させる!?(2023年2月20日)

2035年あたりまでのCO2排出を半減させるのは新車(今後に販売・設置される動力エネルギー機械)ではなく、現在、主として稼働している車の年間走行距離の半減である、と述べてきた。現在、稼働している車の台数が新車よりも格段に多いので、今後10年間のCO2大幅削減に寄与できる主体は既存車、だからである。もしも今後10年間に急激にBEVを増やしたとすると、電池の製造で大量のCO2が出ることになり、これは、直近のCO2半減という大目標と正反対ではないだろうか?

仮に、BEV一台の電池製造中(の半年程度)に排出されるCO2量が、ガソリンエンジン車一台の10年間の走行中に出すCO2量と同じだとしてみよう。BEV製造年度(初年度)の年間CO2排出量が、どれだけ多いか考えてみれば、容易に理解できるだろう。原子力発電か風力・水力・ソーラー発電を主としている数国以外で、もしも、直近の一年間の全ての新車をBEVにしたとすると、HEVだけを売った場合に比べて10倍超の年間CO2排出になる。更に、直近一年のその新車台数が既存のエンジン車の台数の10分の1だと仮定してみると、年間のCO2排出総量は2倍程度以上に増えることになる。HEVを含むエンジン車の方がBEVよりも桁違いに少ない年間CO2排出のはずではないか。数年前から記しているように、まず、発電所からのCO2排出を大幅削減することが前提なのである。(補足だが、発電所の90%を原子力か再生可能エネルギーにしたとしても、残りの10%が炭化水素燃料の燃焼での発電だとなると、BEV製造年度のCO2排出総量は、エンジン車と同等レベルを意味するだろう。減らないのである。更に言うと、再生エネルギーの装置を大量に生産する際の年間CO2排出量も考える必要がある。)

これは車に限ったことではない。空を飛ぶためのものも含めて、様々な動力源で同じはずだろう。

2035年以降の目標?(希望?)だけを言うのではなく、今後の数十年間の段階的かつ全体的で具体的根拠のある計画の提示が同時に必要なのである。

ここに記したことは氷山の一角であり、私なりに全体を俯瞰した具体的計画案がある。

■ネット購入した商品の梱包が相変わらず異常に大きい=ネット依存生活はCO2排出量を増やす?!(2023年3月18日)

一年以上前、ネットで購入した商品が、その何倍も大きな箱に入れられて届いたことを記した。商品の大きさはせいぜい、15㎝x10㎝x5㎝程度だったのだが、箱は30㎝x20㎝x10㎝ほどだった記憶がある。長さ方向に2倍、体積で8倍である。梱包する箱と商品の間に、クッション材は入っていなかった。トラックは、商品の7倍分の空気を運んでいたことになる。量販店へのトラック輸送では、同じ商品を大量に運ぶので、箱の大きさはできるだけ小さくし、薄くて済むクッション材の選定すればよいので対処しやすい。しかも購入者の多くは購入後の商品を電車で自宅まで運ぶことも多いので、CO2排出量は少なめだろうと思う。だが、ネット購入者の購入品の数は少量なので、配送会社には極端に多様な梱包が求められ、対応しきれていないのではないか。必然的に、ネット購入に対応して様々な商品を配送する際、量販店での買い物の形態の何倍ものトラックが必要なことになる。つまり、何倍ものCO2排出量になるということだ。トラックに搭載する商品の総重量は軽くなってその分、使用燃料量が減る、と思うのは間違いである。トラックの重量が大きいので、その加速を繰り返す際にCO2を大量に排出するからである。しかも消費者は店に歩いて行かないので、運動不足にもなり得る。

最近、私はまた、ネットで購入するものが増えてきているのだが、商品の梱包が異常に大きいことがあったので唖然とした。以前よりも大きな段ボール箱で届いたのである。同様の商品が封筒で来た場合もあるので、多様なサイズの箱の在庫が不足しているか、ルールが決められていないようにも思った。数年が経過したにも関わらず、ネット販売業者も宅配業者の経営者も、このことにまだ、気が付いていないのではないか。配送を担当していただいている方々の仕事は増えているので売り上げと利益は増えていることもあって、会社としては忙しく、しかも危機感が薄く、効率化のチェックができていないのかもしれない。

2月20日にも書いたように「更に、短距離配送にBEVを増やすとなると、直近の10年間のCO2排出量は更に急増する」かもしれない。

新コロナウイルスがきっかけとなり、在宅で仕事をすることが増え、情報機器購入が増えた。「それによって車や電車での通勤が減り、CO2排出量を減らせる」という推測とは正反対の方向に進もうとしているとしか思えないのである。

■私の文書作成能力向上のさせかた(2023年3月18日)

先日、ある学生が書いた研究論文(Abstract)を私が手直ししていたときのことである。その学生は私の横に座って、私が文書を修正・加筆等していく様をジッと見ていた。修正・加筆が終わった文書を読むより、文書の修正・加筆の手順を見ている方が格段に上達するので、時々、横にいてもらうようにしてきたのである。

学生がこの文書を作成するのに要した時間は5日(一日に5時間x5日=25時間)程度だったと思うが、この文書修正に私がかけた時間は1時間ほどである。なお、修正・書直し・追記等をしたのは、文書全体の半分以上に及んだ。つまり、修正速度は10倍強である。

その学生は、文書の修正が終わったとき、「先生は何でそんなに簡単・短時間に、読者が理解しやすく、インパクトのあるすごい文書をつくれるんですか?」と聞いてきた。良い質問である。

何故、良い質問だと言えるのか。多くの学生は、投稿する論文を私が修正し終わると、ホッとして、その論文を投稿することに頭が行ってしまうのだが、この学生は、論文投稿に注力するだけでなく、文書作成能力を早く向上させたいという強い意欲があるので、この質問を発したはずだからである。

さて、本題の「文書作成速度と質」だが、私も当然、若い頃は苦労した。30代半ばに、「私が見出した非常に重要な研究成果を広く世界に広めたい」という気持ちになった時があり、とことん、論文作成能力向上に注力した時期がある。(とは言っても、いろいろな仕事があったので、一週間くらいの集中期間を数回つくったにとどまったが。)

まず書く前に、研究成果を適切に表現できるキーワード集を選定した。それらを元にして論文題名を練り上げた。論文題名に使うためのキーワード集を選定したのである。読者が最初に読むのは題名であり、それが興味深ければAbstractと本文を読むはずだと考えたからである。題名を作成後に書いたAbstract中のセンテンスを前後に入れ替えただけで、わかりやすい文書になったこともあり、徐々に楽しくなっていった。他にもいろいろ試したが、文書が完成する少し前に、新たな事に気が付いた。文書は一行ではなく、数十行から数百、数千行にわたるのだが、最初の方の文書から最後の方の文書までの全体の大筋を頭に入れてから修正すると、早く、良い文書になったことである。全体の大筋の記憶をしてから修正するようにしたら、最初の方にあった文節を最後の方に移動することも増えた。一例をあげると、最初の方に書いた目的が、この論文の目的ではなく、論文を出した後の目的であることに気が付いたからである。これは更に重要な恩恵をもたらすことにも気が付いた。論文を出した後の目的とは、「その論文を出した後の研究として何をやるべきか」、つまり、「今後の課題に関する新たなアイデアの端緒」だからである。今後の課題が明確になると、その解決策が思い浮かぶことが意外と増えたのである。(注:論文題名をつくるためのキーワード集と、論文全体のキーワード集とは一致しない部分もある。)

文書作成の力があがってきた頃に、ふと気が付いた初歩的なこともある。そもそも、論文の最初に「題名」と「Abstract(要旨)」と「KeyWords集」を書くのは、まず、この3つをしっかり作成すれば、本文も良いものができるということの暗示だったということである。私の若い頃もそうだったが、初心者は、長く書かなければならない本文を先に書こうとする気持ちになりやすいが、論文の最初から最後に向かう順序に書く方がスムーズに進む場合もあるということである。Abstractがしっかりしていれば、本文はそれに肉付けして膨らませていくのもひとつなのである。(なお、論文題名を適切・魅力的なものにするためには、実験成果の図表や導出した理論式等を最初に整理して見ながら、それに合う題名を考えることも必要である。)

もちろん、良い論文を書くにはまず、広く世界に広めたい研究成果を獲得することが必須なので、上記の文書力向上を、研究を始める中学・高校生がやるのは意味が薄いかもしれない。ただし、中学高校でも自由研究はあるし、研究・論文以外でも上記のことが役に立つ場合もあるだろう。

なお、「私が見出した非常に重要な研究成果」とは何か。それは、その後に進めてきた私の研究室の「6つの究極のエンジン」全てに関わるものであり、3月21日に、英語で書かれた紹介記事が世界に向けて公開された。

How particle breakups could connect phenomena (researchfeatures.com)

続く