つぶやきとささやき(2023年3月23日から)

■私にとって最も重要な研究成果の紹介記事(2023年3月23日)

英国のResearch Featuresは「10,000人を超える人達が読む科学誌」と言われている。昨年末、この科学誌の編集メンバーが私どもの研究に強い関心を持ち、「全世界に向けて紹介したい」という連絡が届いた。一昨日公開された、私どもの研究の紹介記事は、

How particle breakups could connect phenomena (researchfeatures.com)

である。(25年程前に公開した論文(Ken Naitoh, 1999, 2001)を土台にしたもので、その後の成果の要点が記されている。)

■瓢箪から駒(2023年3月28日)

3月21日に英国のResearch Featuresで紹介された私どもの研究成果の要点を記す。

「私達の宇宙に存在する物質は全て、粒子で構成されていると考えられる。その粒子の分裂際中には必ず瓢箪形状が現れるだろう。分裂前は、球や楕円体やひものような形の粒子だったのだが、徐々にふたつのコブが繋がった瓢箪のようになり、その後、コブとコブを繋いでいる部分が細くなっていって、それがなくなると分裂するからだ。この考え方を基にして、瓢箪形状粒子の時間変化を理論解析したところ、今まで解明されて来なかった多くの謎が解けた。しかもそこから、生命・非生命にまたがる6つの究極のエンジンのアイデアが生まれたのである。」

6つの究極のエンジンとは、HPの冒頭にも書いた

・多様な燃料・多様な用途で利用可能な超高効率エンジン

・燃焼反応の100倍程度までのエネルギーを生みだす素粒子のエンジン

・生命の基本作動原理を解明する理論とそれに基づく新たな医学

・経済変動予測理論

・人工天才脳

・100年間を超えて謎だった諸現象を解明する統計流体力学シミュレーション理論

である。

まさに「瓢箪から駒が出る」だ。小さな瓢箪から、巨大な可能性を持つ6つの科学・技術が生まれようとしている。

■6つの究極のエンジンを超えて:理工と政経の融合(2023年3月31日)

私は今まで、理・工・医学だけでなく、ゆっくりと、芸術・経済学の研究(探究)も進めてきた。

早稲田大学には政治経済学部があり、私は政治と経済は一体のものだと考えてきた。この5年程の間、温めてきた新たな政治経済学の方策がある。これについてはまだ公開してきていないが、もう少ししたら、政治の在り方についても、もの申さなければならない、と考え始めている。

その要点は、「環境問題等々について、具体的なデータを元にして行った具体的な試算・分析を、図・表・式で公開した上で、短・中・長期計画と方針案を出し、それらを大勢で見ながら真摯に議論しなさい。」ということだ。理工系では当たり前にやることなのだが、昨今の状態をみていると、この基本ができていないからである。

この意味でも理工系が、現代のカンブリア紀を乗り越える基軸なのである。

■本部キャンパスのハナミズキ(2023年4月7日)

4月初旬、久しぶりに、仕事で本部キャンパスを訪れた。大隈講堂は、新入生やご家族らしき人達でにぎわい、その周囲や沿道には白いハナミズキが咲き乱れていた。桜の花が散った後に、桜を思い出させる白い花を見ると同時に、その花を包み込む新緑の鮮光が目に飛び込んできたのである。遅咲きの白い花をわずかに残した葉桜の残像が、ハナミズキと重なってみえてくる。春風が、桜からハナミズキへ花束のバトンを渡しているかのようである。

本格的な春の訪れを感じる空間への小旅行だった。

帰宅してから思い出したことがある。十数年前、早稲田大学本部キャンパスを舞台にした「ハナミズキ」という映画が上映されたことである。ハナミズキの咲く北海道で高校生活を送った二人の男女が、東京での生活を経て海外に旅立ち、別々の世界を体験した後、ハナミズキの咲く北海道の家で運命的な再会を果たす、という映画である。

返礼、永遠性、忍耐というハナミズキの花言葉を感じさせる映画だった。

ハナミズキは、日本がアメリカに桜を送った「返礼」として、アメリカから送られたものらしい。100年程前、太平洋を間に挟んで対戦したわけだが、その後、両国は互いを尊重し、花というラブレターを送り合うまでになったのである。人間は、互いを傷つけあった後でないと、心を交わすことはできないのだろうか。

「永遠性」という花言葉は「久遠」という二文字を思い出させる。「忍耐」という花言葉は「高く飛びたければ深く学べ」という一節を連想させる。

この白い花を咲かせる早稲田界隈の木々は、ハナミズキの花言葉やエピソードに思いを馳せた近隣の人々によって、放映後に植えられたものかもしれない。

■熱効率60%達成か!?(2023年4月29日)

この2か月間に、世界最大規模の学会(SAE)で、2つの発表を行った。内容の要点は、「最新情報」を参照。

■自動車技術会春季講演会での話題提供(2023年5月24日)

先ほど、話題提供をしてきたので、その要点を「最新情報」に追加した。

■BEVからPHEVへ(2023年5月28日)

5月24日に、自動車技術会春季大会で、「ガソリンエンジンに電池を組み合わせたハイブリッドシステムの過去・現在・将来の予測」を述べた。そこで述べたのは、世界のかなり多くの自動車メーカは、

・mHEV(マイルドハイブリッド):低負荷・低速運転時のエンジンの熱効率が低いことをカバーするために、そこで電池駆動する。

・パラレルHEV(ddHEV):ブレーキ時にエネルギー回生し、ミッションは簡略化する。

・immature BEV:エンジン無しにして、電池のみで車を動かす。

・シリーズHEV(sdHEV):電池容量を増加させ、エンジンは高効率領域でのみ運転して発電専用とし、モーターのみで駆動。

・PHEV:更に、家庭の電力系と接続し、電力を自動車外から供給できるようにし、逆に、自動車に積んだ燃料をエンジンで燃焼させて得た電気を、家庭にも供給できるようにする。

という順番に進んでいる、という私の見解である。世間では、ガソリンエンジン単体車→HEV→BEV、と考える人が多いのだが、そうではない。一時的にある程度(世界の自動車の30%程度)までしか増えないimmature BEVのあとに、本格的に(100%に向かって)普及するのはPHEVだ、と言っているのである。

何故、BEVがPHEVよりも前にあるのか?本格的なHEV、PHEVに向かう前に、大きな電池の信頼性、安全性、性能確保に開発人材を集中しているからではないか、と思ってきたからである。一気に、HEV・PHEVを商品化するのは大変だろう、と考えてきたからだ。走行可能距離はまだ十分とはいえないので、短距離移動中心のユーザーに絞って、安全性・信頼性のある電池を搭載したBEVを市場に出し、それで電池に問題なければPHEVに向かう、とみてきた。(上記の一部は以前も、このHPに記した。)

PHEVが(2050年くらいまでの)最重要点、だという理由はほかにもある。

(1)今後、風力・ソーラー等の再生エネルギーが増加すると、電力供給が不安定になり、停電が増えやすくなる。原子力は安定供給しやすいが、地震や点検等で、今後も、フル稼働し続けるのはむつかしいのではないか。更に、気象変動が激しくなり、災害が増えると、それも、停電の原因になる。都会も例外ではない。都会で再生エネルギーを大量につくるのは容易ではないので、外部供給にたよるしかないからだ。その時、炭化水素燃料や水素等の燃料を、PHEVに供給して発電し、家庭に電力供給する時代になると考えている。まだまだ、世界のほとんどの国が火力発電主体にもかかわらず、「エンジン車が数年程度以上走行する間に排出するCO2量を、製造時の1年間に出すであろう自動車用大型電池」の生産を増やしているのだから、気象変動がおさまる方向に行くとは考えにくいのである。

(2)ドイツがeFuelの使用を要求し、EUが了承したという報道が少し前にあった。何故、ガソリンよりもかなり高価なeFuelの使用を求めたのか。まず、第一に、従来のガソリンエンジンをそのまま、使えるからである。水素よりも、ガソリンエンジンからの変更部分が少なくて済むからだろう。第二は、eFuelの単価は高価でも、PEHVであれば、わずかな量の使用なので、年間のトータルコストが大きくないからである。

ユーザーにとってみれば、eFuelであっても燃料代があまり増えずに、長距離走行も可能で、災害・停電時に家庭に電力供給できるPHEVは魅力的である。電池が進歩すればするほど、PHEVが世界中に広がる、とみている。BEVよりもPHEVの方が、電池が小さいために、安いからでもある。SUVやそれをもう少し大きくしたPHEVに住む人達も増えるかもしれない。

実際、中国で急進している自動車メーカは、PHEV専用エンジンの研究開発に投資しているという報道も増えてきている。米国のBEVメーカも、電池のみ、とは言っていられないときが近づいているだろう。

私の研究室で進め、実用化が見えつつある「高効率エンジン」の狙いのひとつもそこ(PHEV専用エンジン)にある。良い電池はすべての自動車会社で使われていくようになるはずであり、差異はつきにくいので、エンジン部分の性能差が勝負どころになるからだ。(なお、徐々に、低炭素燃料利用に代わっていく可能性は高いが、おそらく2040年でも、世界の半数近くがエンジンだけの車である、という見通しをする人も多い。これから車が増える国々では、安くて走行距離が長い車が求められるからである。その点でもエンジンは重要だ。)

なお、現在の電池の10倍を超える性能(重量あたりの走行可能距離が10倍以上)の大型電池が実用化できれば、BEV(真のBEV)が増えるだろう、とは考えている。ただ、エンジンも電池も化学反応の範疇にあり、原子核反応ではないので容易ではなく、10倍以上のものが登場するとしても22世紀だろう、というのが(現在の)私の考えである。(HPの最新情報、を参照。)

私のところの研究を理解されている方々は、「燃焼反応の10倍以上の走行距離を可能にする電池」と「燃焼反応の100倍程度の素粒子のエンジン(多重衝突噴流群圧縮による弱い原子核反応リアクタ)」のどちらがはやく基礎研究を脱するか、と考えられているのではないか、と思っている。

■BEVと甲殻類(2023年6月2日)

最近、中国の電気自動車メーカ等が、車体の強度確保の構造部分と電池を一体化して、軽量化を進めてきている、という情報があった。今まで、電池は車体の下部を覆うように配置されてきたと思うが、車体の上部・前後にも電池を配置することになっていく、のだろう。そうなると、車の表面全体を電池が覆うことになっていく。5億年ほど前のカンブリア紀には、体の表面を固く重い甲羅でおおった甲殻類が増えたらしい。数年前にこのHPに、現代は第二のカンブリア紀にあると書いたが、表面構造・重量・移動可能距離についても、やはり、同じような状況になっているようである。。

車体と電池を一体化すると、軽量化は進むかもしれないが、電池だけを交換することが難しくなるのではないか、と考えている。整備性と維持費の観点でユーザーがどう思うかだ。更に言えば、電池のみの交換ができないので、BEVそのものを買い換えざるおえなくなって、その製造時の電力使用量・CO2排出の増加も気になる。

最近の中古車の中には、十分な性能を持っているものがそこそこあり、私自身、中古車に乗っていることを数年前に書いた。中古車の有効利用は、新車製造時のCO2排出総量の削減という意味もある。

このひと月の間に、私のPCが2台、クラッシュに近い状態になったので、新品を購入したが、1台では不安なので、中古のPCも購入した。私は3次元のゲームはやらないので、よく選定すれば数万円の中古PCでかなり使える印象である。(今日のこの文書もその安いPCで書いている。)

■周回遅れなのか?(2023年6月2日)

風力発電やBEVの加速、という点で、日本が海外の国々よりも遅れている、という指摘をときどき見る。周回遅れになっている、という記事だ。

過去の歴史を見ていて私がまず思うのは、欧米よりも遅れている部分は、過去100年間にも多々あった、という点である。自動車やカメラをみても、日本が世界で最初に広げたわけではないだろう。なので仮に、遅れている面があっても、海外のやりかたとは別の独自のやりかたで進めているかどうか、がまず、注視すべきポイントのひとつになる。そこを見ずに、海外の視点からだけで「遅れている」というのは、全体を俯瞰しているとは思えない。過去50年ほどの間の日本の独自の技術力の大きな飛躍が、日本や世界に大きな貢献をもたらした事実を忘れてはならないし、今後も新たな独自性を基軸としていけば、明るい未来は必ず訪れるはずである。

50年前、遅れている部分を世界TOPレベルに持って行く際、海外視察は多々やったとは思うが、海外にでっぱなしになったわけではない。当時の方々は、根っこは日本においていたこともあえて、記しておく。

「既存技術の範囲でとりあえず、試してみないとわからない」というような粗い表現ではなく、丁寧な計画が必要だと私は思っている。世界全体のことで、しかも、今まで人類が経験したことがないからだ。

■ソーラー発電の増加はどの程度か(2023年6月2日)

今朝、世界のソーラー・風車等での発電総量が、火力発電によるものに近づいてきている、という報道が見られた。ただし、一日中発電できると仮定した場合のようであり、実際の電力供給量は、平均で8時間/24時間と考えると、(2分の1)x(3分の1)くらいかもしれない。つまり、これでは実質的には全体の20%に満たない。先進国でである。なので、数年前の私の認識と大きな差異はない。しかも今後、増加がどこかで止まるような気がしてならないのである。その理由のひとつを以下に記す。

アフリカを含め、これから電力を増やそうとする多くの国々で、再生可能エネルギーを主とするのは、設備費用の確保が難しく、容易ではないように感じている。蓄電池の大量生産も新たな問題を引き起こす可能性を生む。また、もし、それらの国々で再生可能エネルギーの設備が急増したとしても、数十年以上、それを維持できるかどうか、も気になっている。十~二十年おきくらいで、発電設備の整備や入れ替えが必要だと思うが、その際の資金確保が大変で、更にその都度、古い発電設備の処理や新たな発電設備を製造・購入する際等などでも問題がでるだろう。なので、実質的に世界全体で3分の2を超えるのは容易ではないだろう、と思っている。

しかも、数十年後に世界全体の3分の2が再生可能エネルギーになっても、残り3分の1が化石燃料での発電だと、電池の製造年度のCO2排出量の多さはまだ、以前として問題だろうと考えている。

確実にCO2を減らすHEVは100%に向かって増えていくと考えている。なので、HEVのエンジンと火力発電用エンジンの熱効率の大幅な向上、とともに、燃料の低炭素化が大変重要になると考えているのである。

■二台目は中古車がよいかもしれない(2023年6月3日)

以前も書いたが、BEV購入でけっこうみられるのは、二台の車を所有するケースである。裕福な層、といえるかもしれない。一台は、長距離走行も含めた多様な使用用途に対応できるエンジン単体車かハイブリッド車で、もう一台は近距離用を主としたBEVというスタイルである。なので、このスタイルの層では、半分以上がBEVにはならない、ことになる。

一台のみの所有者は何を選ぶのか?(5月24日に自動車技術会で話し、HPの最新情報に記載したように、2050年でもBEVがHEVに追いつかないすれば)、主にHEVだろう。

二台所有の割合が全体の50%:一台のみ所有者も50%、としてみよう。すると、エンジンを持たない車の割合は、上記を単純計算では最大で25%である。ただ、一台だけの所有者でもBEVを買う人はそこそこ(5人に1人くらい?)いるとすると、全体で、35%くらいまで、となる。

環境負荷低減を考えると、二台目は中古車、というのも有効だろう、と考えてきている。以前も書いたが、使用年数の少ない安価な中古車(エンジン車)が増えているのに対し、新車の性能向上は小さくなっているにも関わらず、新車の価格はあがっているようだからだ。そうなると、BEV35%は難しくなる。

続く