Award: 日本シミュレーション学会 Best Paper Award 受賞のご報告(2020:小林 知嵩、内藤健)

小林 知嵩(修士課程2年)がシミュレーション学会英文論文誌(JASSE)に投稿した論文 “New quasi-stable ratios of particles in nature revealed by multi-dimensional Taylor approximation” (小林、内藤著)が「日本シミュレーション学会 Best Paper Award」を受賞しました。この論文は、量子流体物理学というジャンルのもので、小さな素粒子から生命細胞に至る様々な粒子の分裂現象の解明に関するものです。

究極系研究-ナノからテラスケールに跨がる6つの挑戦(2015)

「究極系研究-ナノからテラスケールにまたがる6つの挑戦」統計熱流体力学を基軸とし、独自の極限的エンジンを開発し、宇宙の本格的利用を促進するとともに、太陽系外に行って「生命とは何か?」という問の答えを見つけたい。二十歳の頃、井深大さんの足跡を知り、「若いうちに、人生をかけるテーマを見つけたい」と思ったことがある。辛い課題だったが、仲間や先輩と飲みながら議論するうちに、当面の基本方針が頭に浮かんだ。「一見、複雑怪奇に見える生命の70%(主成分)は水であり、その流れの中に命は宿るのだから、学生時代は、まず、熱流体力学を極めてみよう」、ということと、「エンジンも生命の心臓も脈動するポンプであるので、日産のエンジン研究開発に貢献できたら、生命研究にも入ろう」ということだった。一言で言えば、熱流体力学を基軸とした「エンジンと生命の融合研究」である。日産では、乱流燃焼の数値解析方法を考案し、それを用いてエンジン性能改善案を提示した。そして、直噴ガソリンエンジン性能を向上させる技術で商品化に寄与した頃、不思議な縁が重なって生命研究に入っていった。その後、西暦2000年という節目に山形大学に移ったが、そこで目にした樹齢1000年の夜桜は、私の人生観を根本から変えた。「1000年後も生き続ける新科学、1000年の時間に耐えうる技術」を考えるようになったのである。めまぐるしく変化する東京では、「現世を忘れぬ」ことしか考えられなかったが、山形で、「久遠の理想」を考えさせられたのだった。山形の大樹が「こころがまえ」をくれたのである。企業が直ぐに欲しがる技術だけではなく、次代の科学技術を生み出さなければならないと考えている。具体的には、エンジンと生命が枝分かれして、以下の6つの課題になっている。

(1)究極熱効率エンジン:熱効率60%以上で、マッハ数ゼロ(地上の道路や発電)からマッハ数15以上(航空宇宙)で作動する単一軽量エンジン(Fugine)の特許群出願とその実機開発[J of Thermal Science 2010, SAEpaper 2014, AIAApaper 2013, 2014等]

(2)究極エンジンシミュレータ:乱流遷移を含む各種遷移現象の統計流体力学・数値解析方法考案と、それに基づく本格的数値風洞・バーチャルエンジンの構築[JJIAM 2011, JSME Int. J. 2013等]

(3)始原菌を用いた燃料生成研究(4)万能基礎医学と人工天才脳の研究[Artificial Life Robotics, 2008, 2010, 2013等]

(5)核子・生命分子・恒星の諸分裂過程を統合的に説明する粒子理論の提示[日経サイエンス、2005, J. of Physics 2012, 2014 等]

(6)経済変動現象解明とその制御方法の提示[JJIAM, 2011]

である。山形大学にいた間、学生とプレベンチャー企業を立ち上げたが、今、五十歳を目前にし、その再立ち上げすべき時期かもしれないとも考えている。

ここまで書いたところで、東北関東大震災に遭遇した。私は東北の方々に大変お世話になったので、やるせない思いで張り裂けそうになる。このタイプの大規模地震は過去に1000年周期で発生していたらしい。一年を刻む「長針」と、千年の「短針」両方を見ながら、「6つの1000年技術への挑戦」を進めなければならないという思いは膨らむばかりである。(20155月一部改変)

世界最高のサイボーグと地上の航空機(2006)

「世界最高のサイボーグ」と「地上の航空機」

 人と一体化した自動車は「世界最高のサイボーグ」と考えてきた.300馬力エンジンで時速200kmを悠々と維持できる車は「地上の航空機」とも言えるだろう.航空宇宙研究の最終目標は生命探査、ではないだろうか.物理数学と企業経験を基軸においてエンジン・航空宇宙・生命分野を一体化し、若人と共に新しい科学・技術の「芽」を生み出したい.

エンジンと生命(2005)

「エンジンと生命」

 「エンジンは車の心臓」という言葉をよく耳にします。私は、「レシプロエンジンも心臓も脈動している」という点に不思議な魅力を感じてきました。エンジンに生命の息吹を感じるのです。また、ガソリンは「化石」燃料、つまり、太古の生命からの贈り物、と考えてきました。「人と一体化した車は世界最高のサイボーグである」とも思います。そんな思いを持って、企業で環境対応型エンジンの燃焼改善研究に関わるとともに、様々な側面から生命に学び、新しい生命科学・技術を模索してきました。

 ワトソンとクリックらがDNAの螺旋構造を発見して以来、「生命の辞書」の作成は急激に進んでいますが、「生命の設計図」を手にするにはまだ程遠い感があります。機械工学は、複雑なシステムが効率的かつ安定して機能するように全体を「設計」します。今までは、主に自動車や航空機といったものを対象としてきましたが、この仕事のやり方は、生命科学の諸分野を融合して、「生命の設計図」に近づくためにも重要であると考えています。流体物理学・分子力学をベースとし、生命の基幹反応に関する新たな力学の構築をも進めています。

 以下の具体的課題について研究開発を進めています。 

バーチャルエンジン: (参考:エンジンテクノロジー, Vo.40, 2005年9月, 山海堂)

コンピュータの中で乱流燃焼現象を予測解析できるようにし、次世代エンジンを模索する。

バイオダイナミクス: (参考:日経サイエンス, 2005年6月号)

生命体内分子(DNA,RNA,アミノ酸,タンパク質など)の構造の必然性を明らかにし、機能分析を行う。

好熱菌等の極限的微生物利用研究:バイオダイナミクスをベースとし、生命起源に近いと言われる単純な微生物の理解を進め、その応用(バイオマス燃料生成や医療技術等)を目指している。

ソフトグラウンドビークル: (参考:自動車技術会2005年秋季大会前刷集No.136-05, 2005.)

巨大地震直後の軟弱土砂地や雪道(ソフトグラウンド)を、今までより自由に走破し、緊急情報収集や救命活動を行う車両の開発。(山形大学工学部と共同で開発中)

 未来機械の研究開発の魅力は、「世界に存在しない新しい形を産みだす」ところにあります。その一方で、現存する生命を深く理解することは、生命と機械の融和のために欠くことができません。

未来への熱い思いと先人への感謝に満ちた「久遠の理想」という言葉の響きに惹かれて25年ほど前、早稲田に入学し、修士課程終了後、子供の頃から憧れていたスカイラインという車の研究開発に関わりたく日産に入り、その後、大自然に恵まれた山形大学で生命科学研究にも没頭し、今春、母校に帰りました。この間、ドイツのアーヘン工科大学に数ヶ月間、滞在することがありましたが、そこで得た最も大切なことは、海外の進んだ技術ではなく、「日本の自然のすばらしさを再認識したこと」でした。ドイツに住んで、その空気を吸いながら歩いてみると、四季がないように感じたからです。日本には、樹齢1000年を超える桜の巨木や鮮烈な色彩を放つ紅葉なども含め、世界に例を見ない美しい自然があり、私達はその自然に感謝しつつ、自然体で生きてきました。このあり方は、次代の科学技術を生み出すために良い風土であると考えています。個々の学生の心に底によどんでいる「未来への思い」を引き出し、一緒になって、次代の科学技術の“たね”を生み出すことが必要だと考えています。