究極系研究-ナノからテラスケールに跨がる6つの挑戦(2015)

「究極系研究-ナノからテラスケールにまたがる6つの挑戦」統計熱流体力学を基軸とし、独自の極限的エンジンを開発し、宇宙の本格的利用を促進するとともに、太陽系外に行って「生命とは何か?」という問の答えを見つけたい。二十歳の頃、井深大さんの足跡を知り、「若いうちに、人生をかけるテーマを見つけたい」と思ったことがある。辛い課題だったが、仲間や先輩と飲みながら議論するうちに、当面の基本方針が頭に浮かんだ。「一見、複雑怪奇に見える生命の70%(主成分)は水であり、その流れの中に命は宿るのだから、学生時代は、まず、熱流体力学を極めてみよう」、ということと、「エンジンも生命の心臓も脈動するポンプであるので、日産のエンジン研究開発に貢献できたら、生命研究にも入ろう」ということだった。一言で言えば、熱流体力学を基軸とした「エンジンと生命の融合研究」である。日産では、乱流燃焼の数値解析方法を考案し、それを用いてエンジン性能改善案を提示した。そして、直噴ガソリンエンジン性能を向上させる技術で商品化に寄与した頃、不思議な縁が重なって生命研究に入っていった。その後、西暦2000年という節目に山形大学に移ったが、そこで目にした樹齢1000年の夜桜は、私の人生観を根本から変えた。「1000年後も生き続ける新科学、1000年の時間に耐えうる技術」を考えるようになったのである。めまぐるしく変化する東京では、「現世を忘れぬ」ことしか考えられなかったが、山形で、「久遠の理想」を考えさせられたのだった。山形の大樹が「こころがまえ」をくれたのである。企業が直ぐに欲しがる技術だけではなく、次代の科学技術を生み出さなければならないと考えている。具体的には、エンジンと生命が枝分かれして、以下の6つの課題になっている。

(1)究極熱効率エンジン:熱効率60%以上で、マッハ数ゼロ(地上の道路や発電)からマッハ数15以上(航空宇宙)で作動する単一軽量エンジン(Fugine)の特許群出願とその実機開発[J of Thermal Science 2010, SAEpaper 2014, AIAApaper 2013, 2014等]

(2)究極エンジンシミュレータ:乱流遷移を含む各種遷移現象の統計流体力学・数値解析方法考案と、それに基づく本格的数値風洞・バーチャルエンジンの構築[JJIAM 2011, JSME Int. J. 2013等]

(3)始原菌を用いた燃料生成研究(4)万能基礎医学と人工天才脳の研究[Artificial Life Robotics, 2008, 2010, 2013等]

(5)核子・生命分子・恒星の諸分裂過程を統合的に説明する粒子理論の提示[日経サイエンス、2005, J. of Physics 2012, 2014 等]

(6)経済変動現象解明とその制御方法の提示[JJIAM, 2011]

である。山形大学にいた間、学生とプレベンチャー企業を立ち上げたが、今、五十歳を目前にし、その再立ち上げすべき時期かもしれないとも考えている。

ここまで書いたところで、東北関東大震災に遭遇した。私は東北の方々に大変お世話になったので、やるせない思いで張り裂けそうになる。このタイプの大規模地震は過去に1000年周期で発生していたらしい。一年を刻む「長針」と、千年の「短針」両方を見ながら、「6つの1000年技術への挑戦」を進めなければならないという思いは膨らむばかりである。(20155月一部改変)

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